おなべ

バビロンのおなべのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
3.8
◉R-15映画だけど、銃やら性描写やら何やら…R-18映画でもおかしくない。観終わってみると、映画人の映画人による映画人のための映画だったような気がする。本作を観る前に『雨に唄えば』を観ておくと一層楽しめるかも。

◉栄華を極めたハリウッド映画の黄金期を舞台に、時代の移ろいと共に変わりゆく映画興行の潮流についていけず、時代に置き去りにされるトップスター達の栄枯盛衰を描いた重厚な人間ドラマ。

◉それより《デイミアン・チャゼル》監督の音楽に鳥肌!『ラ・ラ・ランド』を彷彿とさせる切なくウィットに富んだ楽曲から、血湧き肉躍るような力強い楽曲まで、その音楽表現の幅広さに脱帽。特に、冒頭の数分のワンカット長回しで流れる楽曲「Voodoo Mama」は、カオティックな世界観と映像も相まって、一気にグッと引き込まれた(脳汁垂れ流し状態…)。

◉役者では《マーゴット・ロビー》が特に花丸以上の好演。魅惑的で危うさを纏う、禍福に満ちた女性を見事に演じてみせた。果たして、彼女の役を日本の女優の誰が代わりに演じられようか…。











【以下ネタバレ含む】












◉時代を作った映画のスター達に思いを馳せる。映画の撮影シーンを観て、『雨に唄えば』『アーティスト』を思い出した(『雨に唄えば』に関しては──以下、省略)。人気を博し一躍スターダムへと駆け上がったのも束の間、サイレント映画からトーキー映画に変わるや否や、時代遅れの役者として笑われる。容赦ない世の風当たりは、良くも悪くもエンタメの進化・進歩には欠かせないという皮肉。そんな時代の転換期に生きたスター達の儚い人生をテーマに、それでも映画史を紡いできた名画や映画人への敬意と感謝を忘れない…という監督の熱いメッセージを受け取った。

◉《トビー・マグワイア》の顔よ!白塗りの笑顔が怖すぎるよ…。《ディエゴ・カルバ》の顔抜きショットも印象的。いつの時代も映画に見惚れ魅了される人々の顔はこんな顔なんだよ…と、マニーを通して伝えたかったんだと思う。
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