ひでやん

ブロークン・フラワーズのひでやんのレビュー・感想・評価

ブロークン・フラワーズ(2005年製作の映画)
3.5
昔はプレイボーイだったが、今は無気力に暮らす中年男が、差出人不明の手紙で息子の存在を知り、かつての恋人を訪ね歩くロード・ムービー。

「ピンク色」「タイプライター」「息子」をヒントに、4人の女性に会いに行くドン。

最初に訪ねた元恋人の部屋を見回すと、バスローブ、カーテン、電飾、携帯電話など「ピンク色」が散らかっているのが面白い。そしてタイプライターなし!

他の3人も、名刺、スウェット、バイクと全てにピンク色があるが、差出人は誰か解らない。

「オレに手紙を出したか?」と率直に訊けばいいのに、気まずい時間が流れるばかり。

20年という歳月で、ドンと同じように女性たちも年を重ねている。しかし、女性たちは今も美しく咲いていて、ドンは枯れている。

バスの中、サングラスをした若い男を見て、カッコイイという二人の女。その会話を聞くドンは冴えない中年男だ。

「昔はオレもモテた」という過去の栄光を思い出し、イケメン男に嫉妬しているようだ。

空港でクロスワードに熱中する女性、素っ裸で電話する娘、アシスタント、花屋の女性、旅の道中ドンは多くの女性を目にする。

あわよくば、願わくば、という気持ちで「女」を目にする。その視線は、女性の脚を下から上へ舐め回すように移動する。

しかし、そこに希望の光はない。女性の目に映る自分は冴えない中年男だ。咲きたいと願う心は砕かれた花になる。

ジャームッシュは、謎に対して明確な答えを出さない。だけど人生の答えを出している。

「過去は終わってしまった。大事なのは現在」

つまり今の恋人。出ていったシェリーは戻ってくるのか分からないが、ふわふわ飛んでいたドンは、シェリーに着地してほしい。
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