つるみん

アンテベラムのつるみんのレビュー・感想・評価

アンテベラム(2020年製作の映画)
4.0
【Look forward to your homecoming】

アメリカ南部の綿花畑で奴隷として重労働を強いられている黒人女性エデンと人気作家であり博士号を持つ社会学者であり、夫と娘と幸せな暮らしをしているヴェロニカ。対照的な2人に起こる悲劇のタイムスリップとは…。

してやられた。
全くこのような展開を予測していなかった。黒人差別に誘拐事件等、アメリカが長い歴史抱える問題から現代問題までを網羅し、映画的な構成としても素晴らしく巧く出来ている。完全にやられた。

冒頭、不穏の音楽が終始流れ、カメラはゆっくりワンカットで映していく1860年代の風景と奴隷の生活感。OPから胸が苦しい悲劇と共に始まる本作は、どこか気合いの入り方が違うと察する。その勢いを別方向へと切り返してくる後半の展開には驚くしかない。

現代と60年代の風景を激しく交互に映さないのも好印象であり、それぞれに伏線がいくつも張られている。

あまりこの言葉を言いたくはないが、この作品こそ「映画好きが騙される」〝タイムスリップ〟映画だと思う。
つるみん

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