ちろる

アンテベラムのちろるのレビュー・感想・評価

アンテベラム(2020年製作の映画)
3.9
現代の女性が突如として南北戦争の時代が交錯していく・・・

アメリカ南部のプランテーションで囚われの身となり重労働を強いられているエデンは、ある悲劇をきっかけに奴隷仲間とともに決死の脱走計画を実行することになる。

こちらの作品は、監督・脚本・製作は、人種差別問題などに関するドキュメンタリー作品を製作してきたジェラルド・ブッシュとクリストファー・レンツの監督ユニット。

そうとあってか、物語の構成も、仕掛けもなるほどけっこう凝っていて面白い。
裏切りもあり、最後まで楽しめる「パラドックス・スリラー」仕上がっている。

前半の南北戦争パートで描かれているのは、白人の威圧の元にただただ怯え、ひたすら綿花を栽培することしか出来なかった抑圧された黒人たちの様子。
そして現代になり、黒人の地位向上に向けた活動が進んでいるが、一部ではそんな彼らのことを良く思っていない白人がまだまだいる事実があり、ヴェロニカもテレビ討論でそんな白人に批判されながらも、黒人たちの思いを貫き通している。
そして、ヴェロニカが謎の集団に襲われたことをきっかけに、舞台は再び南北戦争へと移る。
ここまでの流れを見ると、タイムパラドックスの要素が強いスリラーなのだろうと思ったが、予想を大きく裏切られる後半。
結果的にパラドックスということ自体ミスリードであり、私たち観客は物語の壮大な、そして皮肉な展開に呆気に取られる。
思えばいろんな箇所に親切なヒントが散りばめられていたんだけどね。

思いこみに振り回された脚本。
だからこそなのか観たあとに呆気に取られました。

もちろん黒人差別問題をテーマにしており、時代の背景や、社会的な重さがあるものの、実はかなりシンプルで、ちゃんとハラハラドキドキのスリラーエンターテイメントになっており、
メッセージも、近年のアメリカ社会に対することで、考え深い内容でもあるので、多くの人に刺さる作品にもなっているはず。
ちなみにホラー系ではないのでそこは期待しないほうがいいかもしれませんね。
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