ラウぺ

キンキーブーツのラウぺのレビュー・感想・評価

キンキーブーツ(2018年製作の映画)
4.3
父の死を契機に靴工場を継ぐことになったチャーリー。別の道に進むつもりで婚約者も居たが、不本意ながら社長に就いてみると、工場は返品の山で倒産寸前の状態だった。憂さ晴らしに呑んで帰る途中でチンピラに絡まれていた”女”を助けると、それはドラァグクイーンのローラだった・・・

ブロードウェイのミュージカルの英国版のライブ収録。
もちろん純粋な意味での映画とは違いますが、カメラワークや音響など、収録ものとしてのオリジナルな要素に加え、字幕で鑑賞できるのが映画館で観る大きなメリット。

そもそもそんなことはどうでも良くなるくらいの没入感と興奮の嵐。
本物のミュージカルは未体験ですが、これは本当に素晴らしい。

冒頭の靴工場でのチャーリーと父親の登場場面から、工場の面々の踊りに靴作りへの父の情熱と息子への愛情、別の道に進む息子を送り出す父の広い心に祝祭的なムード・・・僅か数分でもう完全に舞台の虜。
狭い工場のセットの中でも中二階のタワーやベルトコンベアーを使った躍動的な踊り。
それらが時計のように正確に混ざり合って一つの世界を作っていく完成度の高さにただ驚くのみ。

工場の経営が危ういと分かってからのドラァグクイーンのローラと仲間たちの登場場面の外連味。
ローラの協力を得ながら工場の再生に乗り出す工場の社員のキャラ立ちも素晴らしい。
それぞれにちゃんと背景があって、それをちゃんと後半に生かす展開の妙味。
泣かす場面と大団円のラストまで、アドレナリン大放出の2時間があっという間。

言葉が分かって本当にライブで観たらどれほど得難い体験になるのだろうかと思うと、ネイティブの人や英語の分る人が本当に羨ましいと思うのですが、こうして映画館でも至福の体験が得られること自体が本当に素晴らしいと思えます。

晴れた昼間の景色がなお一層清々しく、素晴らしく思える後味の素晴らしさはこうしたミュージカルの最上の効能と言えるでしょう。
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