クルードス

FOR REAL-戻らない瞬間、残されるもの。-のクルードスのレビュー・感想・評価

3.9
今年のベイスターズは2位で終わり、CSでは3位の阪神に負けて終わる、という流れはこの作品を観る人なら誰でも知っている。
その中で最後の見せ場をどう持っていくのかなと思っていたが、とても見事な構成力だった。

各選手のエピソードもいくつかあるが、今年は何と言ってもメジャー挑戦を宣言していたキャプテン筒香。
ここを軸にドキュメンタリーは展開していく。

個人の成績よりチームの事を思って、嫌われても言うべき事を言って引っ張っていく姿勢。
大黒柱として毅然とした雰囲気は20代とは思えない風格。
そんな筒香が最後の最後で見せた等身大の姿は、観ていて驚きつつもやはり泣ける。

筒香が裏方さんに挨拶をする中で、一瞬だけ映る、かつて選手として活躍していた吉見が泣いていた姿はグッとくるし、泣いてまで送り出してくれるというのは、裏方さんへの気遣いも忘れない筒香の姿勢が改めて伺える。

最後に自分のユニフォームを後輩達に配る中、かつては共に期待の若手コンビとして鍛えられ、今はベテランの域に達している先輩の梶谷に渡す場面は、色々な思いが駆け巡る。
そして明るいキャラクターの乙坂がちゃんとオチをつけて終わるのは、このチームの明るさを示している。

不満があるとすれば、今年苦しんで後半巻き返した梶谷のエピソードが無かった事。そこは是非見てみたかったなあ。

あと今回観賞した劇場、今のハマスタを見れば一目瞭然だが、一人で来ていた女性客が何人もいた。
本当に弱かった暗黒時代、客が一人で来てるオッサンばかりで、ヤジも酷く雰囲気も悪い時代を知ってるオールドファンとしては感慨深く本当に嬉しかった。