ぶみ

星の子のぶみのレビュー・感想・評価

星の子(2020年製作の映画)
3.0
今村夏子が上梓した同名小説を、大森立嗣監督、脚本、芦田愛菜主演により映像化したドラマ。
新興宗教に傾倒する両親に育てられた中学三年生の主人公ちひろ等の姿を描く。
主人公ちひろを芦田、両親を永瀬正敏、原田知世が演じているほか、大友康平、岡田将生、高良健吾、黒木華等が脇を固めている。
子を持つ親にとって、病気が治るのならば藁にも縋りたいと思う気持ちは理解できるものであり、それがたまたま怪しげな水だったことから、新興宗教に傾倒していってしまう両親を永瀬と原田が淡々と演じており、その傾倒具合が伝わってくる。
反対に、その二人からたっぷりの愛情を受け育てられたものの、思春期において、ふと自分や両親の姿を俯瞰して見た時の揺れ動く心情を芦田が透明感溢れる演技で見せてくれている。
と同時に、中学生の友達関係や保健室、憧れの先生等、学校生活を中心とした青春の一ページが鮮やかに描かれており、ノスタルジーを感じさせてくれるもの。
人間は、相対的ではなく、絶対的な何かを心の支えにすることで楽に生きて行くことができる生き物であり、だからこそ様々な宗教が成立しているのだが、何を信じるかは人それぞれ。
また、その人にとって当たり前だと感じていることが、他人からは奇異な行動に見えるのも往々にしてあることであり、例えば私のように毎週末映画館に足を運ぶ行動は、別の視点からは全く理解できないものとして見られてもおかしくない。
そう考えると、メジャーな宗教が世間一般に受け入れられ、マイナーな宗教が排除される風潮が正しいのかどうかすら怪しくなってくる。
その人にとっては、それが当たり前なのだから。
物語はちひろ視点を中心としているため、もう少し新興宗教側を掘り下げてくれると映画として面白くなったかなと感じた次第。
静かな映像ながら、前述のようなことを考えるきっかけを与えてくれるとともに、新興宗教の集会シーンは自分の知らない世界に触れることができたため、強烈なインパクトとラストの星空が印象的な一作。

コーヒーは、パワーを弱めるからな。
ぶみ

ぶみ