ミシンそば

星の子のミシンそばのネタバレレビュー・内容・結末

星の子(2020年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

スニーク・プレビューで鑑賞。観たのは8月6日だが、規約に則り、感想は今日と言う9月4日まで約ひと月寝かせた。
正直な話、宗教系のお話は、教団本部が爆発したり、信者がアクション俳優に襲い掛かって返り討ちからの皆殺し、なんかの目に遭わないようなものは、進んで観ようとは思えない。
(実際、Filmarksや製作者には申し訳ないが、せっかく当選したのに観ないでおこうかな、とも思ったし、画面を見るのがキツくて途中で休憩も取った)。

忌憚なき感想を挙げるとすれば、この映画は「毒」に人が侵される過程と、侵されきった現在を交互に描く劇物映画だ。
これは持論でしかないが、日本人とは、カルトであれ何であれ、宗教には「空気であり続ける」ことを願うものだと思っている。
この映画が描く宗教は、その「空気」が「毒」としての実体を得て人々の暮らしを侵食していることを如実、かつ辛辣に描いているので、
この映画が描く静かな日常風景さえ、不愉快で仕方がない毒性を帯びていると感じざるを得ない。
作中、主人公一家の親戚が、そのカルトの実態を割と簡単に暴くのだが、深く毒に侵された一家はそれを突っ撥ねる(ここでキツくなって休憩)。
そこからの展開は遅いようで早いと感じた。
親が怪しい儀式をしているところを、主人公が一目惚れしたイケメン教師に目撃されてからの、
唐突なアニメ演出は「正常さ」とは何かを知る機会をそもそも逸した主人公の世界が崩壊したような演出のグロテスクさは際立っていた。
そのイケメン教師のクズで利己的、且つ(主人公の目線に立てば)排他的な本性の露呈までは特にキツかったが、
グロテスクさで言えば前半、そして中盤のアニメ演出の比ではないような教団本部での出来事を描く後半からは、
主人公を演じる芦田愛菜の「冷徹な客観視」がこの映画を観ている私に助力を与えるようにも思えて、休憩を挟むことなく観終わることができた。
カルトを描いて視聴者を不快にさせる部分に関しては、明らかにそれが狙いであり、自分はまんまとその策にハマったので何も言うまい。
まるで世界を隔てたような姉の存在や、非常にふわっとした最後も、特に文句はない。ただ、多分劇場では観ないと思う。
キツい映画だった。

余談だが、T2は何度も観てるはずなのに、エドワード・ファーロングであることに今の今まで気づかなかった。
エドワード・フォーロングってずっと呼んでた。