塩

星の子の塩のレビュー・感想・評価

星の子(2020年製作の映画)
3.8
信じるって心理は、とても恐いものだと思った。それと同時にものすごくエネルギーが要ることで、その心理はとても尊いものだとも思った。そして事実がどうであれ、信じる信じないだけは、どうしたって自分で決められる唯一の心理なのだ。
当たり前だと思っていた事が当たり前じゃなかったと知った時、それがおかしいと笑われた時、かつての当たり前は恥ずかしいものになりうる。
ちひろほど大きな信仰心を前にした訳でなくとも、とても些細な事で、例えば親がかっこ悪いと言ったものを根拠もなくかっこ悪いと思い込んでいたり。そういう些細で歪な当たり前はそれぞれにあるものだと思う。
自分の信じている相手が信じているものを信じられなくなった時、人は何を信じたら良いのか。
それはもう、なるほど確かに、相手しかないのだと思う。その相手を信じるという自分なのだな、と。芦田愛菜のコメントはとんでもなく的を得ていて、彼女がちひろなんだと思った。
友達カップルの仲の良さとか、彼氏の良さとか、傍から見たらあの慰め方はひどく空気の読めない男の子だと思ったけど、何を優しさと取るかだって相手次第だし自分次第なんだよな、と。それだってひとつの信じるって心理のような気もする。
「気づいた人から変わっていく」という台詞はとても良い言葉だと思った。

鑑賞中や直後はあまりスッキリ感もなく、見ていて気分の良いものではない為うーんな感じで映画館を出たものの、色々と思考が巡るととても良い作品だったように思えてきた。
少なくともわたしは、大切な人の信じてるものを笑いたくはないな。そこまで強く、自分を、信じられる人になりたい。
3人同時に見られる事はなくとも、流れ星を見られるような人に。
塩