タスマニア

星の子のタスマニアのレビュー・感想・評価

星の子(2020年製作の映画)
3.5
2020年204本目。

うん、かなり難しい映画だなぁ。
内容の理解が難しいというより、誰かと感想を共有したり議論したりするにはとても難しいと感じた。
それぞれが各々に持ち帰り、心の中で自分に問いかけて処理するような映画。
周りの誰かに直接感想を聞いたりしにくいわ。

何が正しいかがそれぞれの立場によって確かに違っていて、善悪を判断するような映画でもない気がする。
フラットに捉えることが正しいことでもないし。

そういう点では興味深かったし、めちゃくちゃ余韻残す終わらせ方にしているのは意図的なのかな?
あの終わり方のせいか、帰り道ではずっといろいろな感情や想いが頭の中をグルグルしてた。

しかし、芦田パイセンは本当にすごい女優さんだ。
多分ネームバリュー故に結構なバイアスがかかっているんだと思うけど、すごい演技だ。
ちーちゃんを演じるという点では、もしかしたら清原伽耶とかも良いかもしれない。この二人を競合と捉えているのは自分だけかもしれない笑
今日本で一番聡明な16歳のお嬢さんで、最も理想的な娘かもしれない。
既に国民的女優。

信仰が医学や科学を超える奇跡はとても美しいもので、それで一人の少女の命を救ったのだとしたら、その体験は強烈。
人々は信仰や宗教に奇跡を見たがるのだと思う。
宗教観に関しては自分みたいな無知な人間が迂闊に語ってはいけないものだけど、最初の数分の描写だけでも、彼ら家族とあの水は切り離せないものになってしまうことは容易に想像がつく。
そして、まーちゃんの行動も。
蒔田彩珠がこんな短時間でもめちゃくちゃインパクト残していきやがる。

岡田将生が演じる南先生役も良い。
「告白」のウェルテルのイメージが強いけど笑
ちーちゃんのキャラクターに感情移入している我々からすると、南は強烈なヘイトの対象となってしまったけど、冷静に考えると、そんなに異常なキャラクターではない。
言い方・伝え方に思いやりがない人間なんてそこら中にいるしね。
まぁ、教員としての適性について議論するとしたら、あれはダメだけど笑

南先生の衝撃の発言後に、立ちすくみ、涙をポロポロ流すちーちゃんのアングルの向こうに、なべちゃんを写す構図素晴らしい。
彼女がゆっくりとちーちゃんに近づく姿に「想いやり」と「温度」を感じた。
そう、この映画全編を通して結構「きついなぁ」と感じていたけど、
なべちゃんと新村くんの存在に救われている部分があった笑
なべちゃんの美人でサバサバして友達想いなところが完璧な女の子すぎる。
そして、そんな女の子に相応しい新村くんの優しさ。
二人はちーちゃんに対してフラットに接していたことが、とても素敵。

登場人物が「信じる人」・「信じない人」の二択ではなく、それぞれのスタンスに、かなりグラデーションがかかっていて、ちーちゃん自身も自分のスタンスを微妙に変えていくところもこの映画を「難しいな」と思った部分。

高良健吾や黒木華の狂気を感じさせる雰囲気も称賛もので、普段の自分ならばこちらばかりに目が行くと思うけど
この映画は学生側の登場人物から目が離せなかった。
あと、しつこいようだけど芦田愛菜の演技と存在感に気圧された感がある。

最後らへんは正直なところ全然わからなかった笑
母親とずっとすれ違うという展開、やたらと時間を気にしないで星を見ようとする家族、流れ星、暗転。
普通の映画ならば、あの流れの後に家族に衝撃的な出来事が起きなければ説明がつかないよ。
それこそ、家族が切り離されるみたいな展開が。

意味ありげでなんでもない家族のワンシーンだったのか、絶望的な最後を隠し通したラストシーンだったのか、そこ含めていろいろ余韻を残す終わり方だったなぁ。

友達が話す諸々の悪い噂に対して「でも、それって噂でしょ」というセリフに関してはちーちゃんという役柄上の言葉だけではなく、芦田愛菜本人の言葉のようにも思えた。
メディアで見かける彼女の印象がそうさせている。
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