映画体験に関してハズレ続きだったこの時期。ジョゼ虎のアニメ版もやはりハズレだった。
この作品、原作小説や実写を通ってるかどうかで評価が決定的に分かれると思う。単体としては、キレイな純愛ストーリーでよくできていた。
しかしながら、これはありなのか?
結論を一言で言えば、なしだろう。
「アニヲタ向けにキレイ事ばかりのやさし〜い世界」に原作・実写から改悪されてたように感じる。
障害者を取り巻くリアルはぼかされて、ジョゼは天才的な絵を描くという属性を追加され、本当の“持たざる者”ではなくなった。
恒夫のバイト先は雀荘からダイビングショップになり彼のだらしなさは描かれず、アニヲタが感情移入しやすいまっすぐな青年として描かれた。
とりわけ最大の改悪だったのは、障害者の性被害に触れなかったこと。原作と実写で明確にその比喩であった「虎」は意味を失い、作品の背骨が抜かれてしまった。
ポイントポイントでいいなと思った部分もあったが、いずれにしても背骨を失ったジョゼ虎を高評価などできない。
本来のジョゼ虎が持つアクの強さや暗さ、猥雑さに惹かれた人は、劇場アニメ版のキラキラした純愛ストーリーを決して好まないだろう。逆も然りで、障害はあくまでスパイスのキラキラ青春恋物語を好きになった人は、原作や実写版に触れてショックを受けるのだろう。
本当に不幸なアニメ化だった。
オリジナルでやれば悪い作品じゃなかったのにな。
なお、蛇足だけど、原作者が2019年に亡くなっている。邪推せざるを得ない。
(追記)
他のレビューを見たら予想通りだった。
ジョゼ虎を初見の多くの人が「感動した」と高評価する一方で、まれに低評価のレビューがあって、それは漏れなく原作や実写版が好きな人。
まぁ低評価レビューは書かない人も多いし、結果スコアは高くなるのだなぁ。