keith中村

名探偵コナン 緋色の弾丸のkeith中村のレビュー・感想・評価

名探偵コナン 緋色の弾丸(2021年製作の映画)
5.0
 去年の冬に予告篇を見て、「あ、やっぱ今年は東京オリンピックものなんだ」と思っていると、あれよあれよとコロナ禍の世の中になってしまい、オリンピック延期が確定してしまった。
 「ああ、コナン可哀想。せっかくオリンピックにぶつけてきたのに本家が延期しちゃったよ~」と思っていたら、映画の方も1年延びたので、結局足並みが揃ったわけだ。
 
 しかも実際に観てみるとオリンピックではなく、リニアがメインの話だったので、そこは現実のオリンピックがどうなるかギリギリまで見えない現時点で公開するのも、まあ悪くないタイミングですわね。
 
 私は「名探偵コナン」をもともとは馬鹿にしていたクチで、原作漫画もテレビも見ていなかった。
 2000年代初頭に、会社の、映画好きの後輩から「コナンとクレしんの劇場版はなかなか侮れないですよ」と教えられ、また「コナンの劇場版は、推理とか関係なく年に一度のお祭りだと思って観るものなのです」とも教えられた。
 で、当時まだ10作もなかった劇場版をDVDで順番に観ていって見事にハマった。
 漫画喫茶で、当時出版されていた巻もすべて読んだ。
 
 私が頭をぶん殴られるくらいコナンというか青山剛昌さんにショックを受け、尊敬するようになったのは、原作に出てくる「犯人を推理で追い詰めて、みすみす自殺させちまう探偵は、殺人者と変わんねーよ」というコナン君のセリフ。
 いわゆる「本格推理」というジャンルって、人物が全部作者の「駒」なんですよね。
 だから、そこで誰が死のうが、読者は心を動かされない。興味はそこには全然なくて、フーダニットとかハウダニットにしかないから。
 でもコナンは、一方で「本格推理」的なことをやりながら、他方ではレギュラーキャラクターたちの描き込みを続けてきた。
 そうすると、「愛着のある常連」と「『駒』でしかない一見さんの加害者・被害者」に、我々受け手の受け止め方に「ずれ」が生じるんです。
 
 それを、上に書いたセリフは見事に合一した。
 「ページ数の都合で、そりゃ毎回殺したり殺されたりするのは常連じゃない。でも、常連じゃないそっちにだって人生があると思って私(=青山先生)は描いてるんだよ。だから、誰も単なる『駒』にはしないよ!」 っていう気高い意志を感じて、本作を侮れなくなった。というか、ミステリーというジャンルの作品群の中で、これほど崇高なものに触れたことがないとさえ思った。
 
 そこに痺れたのです、私は。
 
 私、人生でベスト1か2の作品は高校からずっと変わらず「雨に唄えば」なんですが、それを大学の映画研究部に入ったときに映研の「主」であった大学5年生の(タイプミスじゃないです。留年してた人なんで)Kさんに言ったところ、「ああ、いい作品だよね。でも、最後のリナ・ラモントが可哀想すぎるじゃん」って言われたことがあります。
 私は、10代のほとんど最後までそんな視点で映画を観たことがなかった。
 悪役が最後に裁かれると、「ざまあっ!」としか感じなかった。
 だから、先輩のKさんの言葉に、やっぱ頭をぶん殴られる思いだった。
 
 コナンの「犯人を推理で追い詰めて、みすみす自殺させちまう探偵は~」は、その感覚を軽く30歳を超えていた私に再び味あわせてくれたのです。
 
 だから、その年に公開された「水平線上の陰謀」以降は、かなり劇場で観てる。
 元カノだったり、元ヨメだったり、あるいは一人で。
 今日も、52歳のオジサンですが、ひとりで劇場に行ってきましたよ。
 
 私、もう10年以上原作は読んでないんで、赤井さんは知ってたけど、その家族とかはほとんど知識がなかった。
 先週だっけ、同じ部署なんだけど、私が今住んでる東京じゃなく、大阪側にいる後輩が「今日は赤井カフェに行くので定時で失礼します!」とSlackに書いてソッコー仕事を上がったときも、「あ~。そんなイベントあるんだ~」としか思わなかった。
 
 で、さっき観てきましたよ。
 やっぱ、赤井さんの家族とか、自分としてはかなりどうでもよかった。あんまり知らんし。
 あと、「結構大味な脚本だなあ」と思ったり。
 劇場版って、蘭ちゃんがピンチに陥ってコナンが奮闘する回の出来がやっぱり高くって、今回みたいに蘭ちゃんが安全圏にいると、あんまり盛り上がらないじゃん?!
 でも、本作の白眉は何といっても灰原哀ちゃんとコナンくんのバディ感。
 ここまで、この二人ががっつりバディで活躍する回ってありましたっけ?
 
 劇場版では、「コナンと平次」「コナンとキッド」のバディものはありましたが、「コナンと哀ちゃん」のバディものは、これが恐らく初めて。
 もう、そこが最高過ぎて。
 
 私がフィルマのレビューするときのいつもの悪い癖は、酒を飲みながら書いちゃうことだね。
 今回も安定のぐだぐだレビューになっちゃいましたね。ふふっ。
 
 だから、ぐだぐだついでに、今回の隠れたVIPを紹介。
 そりゃ、間違いなく園子ちゃんでしょ?
 序盤で、リニアのチケットが一枚足りないってところで、博士になぞなぞを振る。
 あれ、最初っから自分が譲る前提で、ちびっ子たちをハラハラ・ワクワクさせてるよね。
 もう、前作での、「前髪垂らした園子ちゃん」から2年待った後の、再度「素敵な園子ちゃん」だったので、そんなもん、このレビュー、やっぱ満点以外ないでしょ?!