氷雨水葵

セイント・モード/狂信の氷雨水葵のレビュー・感想・評価

セイント・モード/狂信(2019年製作の映画)
3.7
2023年30本目

こういう狂信的なの好き

◆あらすじ
住み込み看護師のモード(モーフィド・クラーク)は、病に侵された有名ダンサー・アマンダ(ジェニファー・イーリー)の自宅にやってくる。

アマンダは信心深いモードに惹かれ、モードもアマンダの魂を救済しようとのめり込んでいく。

やがてモードは、自分が遣わされたのは神の意志だと確信し―――。

◆感想
実は『ベネデッタ』の前に本作を観ていたのですが、なんかこういう狂信的なスリラー映画って心地よくないですか?まぁ邦題に『狂信』ってあるから、なんとなく内容は想像できるんですが、それ以上にモーフィッド・クラーク演じるモードがヤバかった。人を導く(魂を救う)ことに生きがいを感じている時点で、なんかゾワゾワしますが、神を信じすぎてもよくないって話。

本作のいいところは、変にジャンプスケアがないところ。もちろん、サプライズは嫌いじゃないし、むしろいい塩梅でジャンプスケアあったほうが心地いいけれど、本作はそういうのじゃないんですよね。むしろ一見普通の看護師モードが、神への信仰心から狂気に飲み込まれていくのが怖い。ジワジワと嫌な汗をかくような、逃げ場のない恐怖演出が見どころです。派手なシーンはなく、割と淡々とストーリーは進みますが、モードが看護師をクビにされてからが面白い。必至になって友達に電話したり、靴のなかに針仕込んで痛みに耐えたり、神の声を聴いたり。個人的には、神の声がはっきり聴こえすぎて少し残念でした。もっと囁くような声でもよかったかも。

にしても、モードを演じたモーフィッド・クラークの演技すごい。普通の看護師を演じながらも、徐々に狂信的で妄信的なモードに変貌していく様を見事に演じきっています。アマンダを導くことへの執着や独占的な部分も垣間見えて、神に対する変態なまでの信仰心もあって、そんな難しいモードをしっかり演じていました。
背中に翼が生えたときは、どうしたかと思いましたが、神々しさの欠片もないラストでもモード的には満足だったんじゃない?むしろ自分が導かれ、救済されちゃった感じだったし。『ベネデッタ』を観ても思いましたが、信仰や宗教ってなんだか孤独。モードがそれを体現していて、結局は友達もいないし、信じられる人もいないし、なら自分にできることは「導くことだ!」ってなるんですよね。神にすがるしかないエンドでした。

80分ほどしかないので、あっさりジワジワ系ホラーを探している人はぜひ!
氷雨水葵

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