天馬トビオ

やさしいにっぽん人の天馬トビオのレビュー・感想・評価

やさしいにっぽん人(1971年製作の映画)
3.0
やたら議論する70年代の日本の若者たち。それは、新宿駅西口広場のフォークゲリラを写したドキュメンタリーでも観たことがある光景だった。広場で、歩行者天国で、酒場で、職場で、ひたすら語り続ける若者たち。議論の時代。言葉の洪水。

自分の意見をとうとうとしゃべり続ける男がいるかと思えば、他者の言葉の引用しかできない男がいる。そして、いっさいの言葉を発しない男も……。言葉は空虚に発せられるだけなのか。それを支える行動はどこにあるのか。こういう頭でっかちな映画が70年代にぼくらに影響を与えたのは確かだったと思う。やがて言葉遊びの系譜は、真崎守のマンガに引き継がれ、ぼくらもまた、稚拙な議論を喫茶店の片隅や、下宿の狭いアパートの一室でダラダラと続けていた。

もう一つ大事なことを記しておこう。ぼくはこの映画で緑魔子という女優を知りその魅力に心惹かれ、次の『日本妖怪伝サトリ』で彼女にぞっこんとなるのだった。
天馬トビオ

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