吉太郎

プロミシング・ヤング・ウーマンの吉太郎のレビュー・感想・評価

4.0
キャシーの執念勝ち。
この世ではあんなドラマチックなエンドはないけど!多くが泣き寝入りするんだろうなぁ。おしゃれなリベンジコメディではないです。視点誘導がかなり巧みで、転の部分で落差にまんまとショックを受けるし、油断させる演出にまんまとハマる。ニーナの描写やレイプシーンが一切ないのは、最後の枕シーンのキレを増加させる意図、、、?監督の頭の中のシナリオを想像するとゾッとするな。

世の中自体がね〜『ガキだった』『覚えてない』で忘れていく。ある意味、犯罪や事件だけじゃなく、過去の失敗とかトラウマもそう。奇しくも、都合よく忘れたひとから幸せになれる。囚われ続ける人だけが幸せになれない。そういうカラクリになってるし、多くの人がそうしてる。キャシーも忘れたフリした方が幸せになれたことは確かだけど、不器用な人もいるし、繊細だった。
ただ、忘れた側も、それを一生覚えてる人がいるってことは忘れないほうがいいよね。未来が変えられるのは確か。でも過去が消え去ることとは全く別物。
あと、今回は女性被害目線で描かれててかつ私は女だけど、記憶ない〜、若気の至りね〜とか言うやつは、女でも男でも大勢いるよな。『記憶がないならオールオッケーです』って道徳の教科書に書いてあるのか?と思うほどに。若いとかは関係ないと思う。記憶は飛ばしたことないけど、映画見ながら自分の過去の言動を振り返っちゃうよね。

途中の学長?も人間らしさがあらわになっておもろーだったね。学識がある人も、対象が何であるか誰であるかによって正義が変わる。人間の危うさ。神聖な正義なんてものはこの世になし。
「正義は特撮ヒーローものと少年ジャンプの中にしかないと思え! 分かったか朝ドラ!」(リーガルハイ)

マヌケなアル。
ライアンのなんとも言えないラインのルックス。
法律はよく分からないけど、デートレイプの定義が曖昧すぎるな〜。
正直、常に一生正しくあるのは難易度が高すぎるよね。この映画に嫌悪を抱いた全員が、都度都度『弱いものいじめはやめろ!』と実際に叫んできたかと言われればほとんどはそうではないと思う。
ただもし、酒、セックス、金、等々で人に被害を及ぼしたなら、それが原因で、いずれ一瞬にして破滅に追い込まれる可能性が一生あり続けることは忘れたくないね。その時、『なんでこんなことに、、』とか言うんだと思う我々って。

『前途有望』がニーナではなく、アルに向けられるこの世界、アルが未来でいけしゃあしゃあと祝福にまみれ挙式しているこの世界、疑わしきは罰せずとか言いながら冤罪はなくならないこの矛盾した世界。悲観的に見れば私達がいるのはこういう世界。冷静になっちゃうと悲ぴいね。そりゃ、普通に生きてたら死にたくなるよな。知らないフリができない人は死んじゃうでしょ。燃やすシーンでアルが吐いてたけど、なぜお前が吐いてますか?

社会に出て会社にいてよりそう思うけど、自分に対して戒め。性問題だけじゃない。自分の発言が誰かを苦しめたこと、絶対にあったな。反省するべきこともある。今起こる不愉快なことは、全部過去の自分からの報復だということだろう。

人の恨みに時効なし
吉太郎

吉太郎