あんじょーら

プロミシング・ヤング・ウーマンのあんじょーらのレビュー・感想・評価

4.3
衝撃的な映画を観てしまった・・・・


勢いで殴り書きなんで、後で修正するかも。


男性は是非観ておいた方が良いです。出来れば劇場で。すべての人にオススメします、終わり。でいいくらいの傑作。


アメリカ公開は2020年で、しかも第93回アカデミー賞にノミネートされています。作品賞、監督賞エメラルド・フェネル、主演女優賞キャリー・マリガン、脚本賞エメラルド・フェネル、編集賞、の5つにノミネートされていて、受賞は脚本賞のみです。やはり私の好みとは改めて全然違うし(当たり前だ)、アカデミー賞はノミネートされつつも逃した作品や、ノミネートすらされなかった作品の方がずっと映画史的には重要な気がします、という私のそういう主観をまた補強する結果です。そういう意味で、この作品も同じ扱いを受けると思います。私は今年公開の映画は全然観られていないのですが(なんでレイトショーがダメなのか?理解に苦しむし、科学的根拠とかはどうでも良くて雰囲気や空気で決まる社会に暮らしているので、凄く滅入ります、知ってても、滅入る)、もう今年観た映画のベストと言い切って良い作品です。


衝撃度としてスゴイと感じる、という事は私がいかに男性として下駄を履かされているか?を証明している、という事にも繋がるし、その通りですし、振り返って、恐らく忘れているであろう事も含めて(忘れているという段階で罪)、具体的に何、と言えなくとも非常にヘヴィーな作品です。肌感覚として、理解出来ます。


反省とは過去を振り返って、省みて考える事で、それは償いとは違います。償いとは、相手に与えた傷に対して、相手の身になって懺悔の気持ちが起こらないと、償いとは言えず、また、誰かに言われて起こす行動ではない、と考えます。自らの行動に内発的な、自らの考えが基になって起こす行動によって初めて相手に伝わる事であり、その行動によってのみ相手から許される可能性が出てくる、と思うのです。しかし、人は過ちを犯す生き物であり、神のように潔癖に生きられる人間はいません。そもそも、神と言う概念すら、人間が考えた不条理な世界を生きるための方便ではないか?と考えていますし、無神論ってそういう事だと思います。神が許しても相手が許すか?は不明ですから。


あなたは過去の過ちに対して、償いの行動を起こしてきているのか?という鋭い刃を観客に突き付けてくる作品です。もちろん私は全然償えていない様々な罪があると思います。その事に気付かされる作品です。特に男性の性的な行動に対して。


深夜のクラブで男性3人が、男性だけで仕事への考えに対して同意を得て盛り上がる、いわゆるホモソーシャルな話題で意気投合していますが、ソファに泥酔している女性客(キャリー・マリガン)を見つけ・・・と言うのが冒頭です。


この冒頭、男性の酔う事によって理性が後退している様を踊りで表現する演出が非常にクールで、これから起こる映画の内容を示唆していて、ストレートな表現ですけれど、それでもこの映画の衝撃度から考えると、確かにまだソフトな演出だと思います。


これは悪に対して鉄槌を喰らわせて気分爽快、という娯楽作品ではなく、もちろん娯楽作品として見る事も出来るとは思いますが、社会と折り合おうとするある人間の、それも既に不在の他者に対する行動の結果を描いた作品です。そういう意味では、ロマンスですらあります。


そして当然ですけれど、そんな男性ばかりじゃない、とは言えない世界共通の話し、に私には見えました。


ある1名の男性を除いて、この作品に出てくる男性の非常に狡くて、自らの保身だけの言動で、償おうという気さえない、というのが、また、そんな人ばかりじゃない、と自分を含めて言えない事に、非常に刺さる作品です。もちろん主人公にも問題があるのですが。とにかく男性が非常に幼い・・・もちろん私を筆頭に、そしてそれが恥ずかしい。


ただ、私は非常にネガティブな思考の持ち主なので、ただの難癖かも知れませんけれど、前途有望じゃないといけないのか?とは思います。前途有望だろうが無かろうが、男性だろうが女性だろうが、過ちを犯した場合は償わなければならないし、幼ければ許されるのか?と言えばそんな事も無いし、リビドーに従ったという事は理性を捨てた(は言い過ぎかもしれませんけれど、脇には置いた)結果の責任は負わなければいけないと思います。多分、善悪が判るの年齢に達していれば。当然主人公キャリー・マリガン演じるキャシーも、罪は償わなければならない。


キャリー・マリガンの演技は相変わらず素晴らしいですし、どちらかと言えばキャリアの中では穏やかな人間を演じている印象がありますが、今作の最も良かったのは、声の演技。声のトーンで覚悟が分かるような気がします。


ネタバレではないけれど、みんな大好きクリストファー・ミンツ=プラッセ、つまりマクラビン!が出演していますけれど、大人になったなぁ。とても卑屈な、そして凄く私にも近い、屑な事に拘って人生を無駄にしている、ように、見える人、を演じていて、説得力がありました。依存傾向のある人は気をつけないとね。それでも、この映画の中の男性では、まだマシな方です、多分。


スポーツの祭典を見るよりもこの映画を観た方が世界は少しでも良くなるんじゃないかな?と言うくらい素晴らしい傑作なので、映画館に行ける人にオススメ致します。


そしてネタバレ感想では説明しますけれど、スーパーヒーロー映画、スーパーマンとかバットマンとかその手のヴィジランテ、そういう映画が好きな人にオススメしたい映画です。この映画と対になる映画はジェームズ・ガン監督の「スーパー」かもしれません。

映画館に行ける人にオススメします。