decap

プロミシング・ヤング・ウーマンのdecapのレビュー・感想・評価

4.3
理不尽な暴力と“前途有望な若い女性”を抑圧する仕組みに巻き込まれた友人のため、また自身の生きる理由として、無責任な加害者擁護へ唾を吐き、“優しい人”の行いに啖呵を切る。ここで加害性のバリエーションと、そこにある赦しの可能性をもコンパクトに示唆している脚本が凄い。
さらに、これは過去の事柄に執着して人生の目的を単純化し、一般的な“幸せ”に追随しないことで贖罪の意識をごまかしている生き様を描いた作品でもある。その使命には終わりがないし、終わりがあったとしてもそれには後ろめたさが伴うむなしいもの。
それを危惧しつつも干渉方法を模索する親たちの視点と行いには胸が詰まる。
作品全体がポップで、時にコメディ的に描きながらも、時折これは笑っていいものではない事を突き付ける。
劇中と現実がシンクロして、理不尽で残酷な現実を物語として消費していることに中指を立てる衝撃の展開。こういう映画が観たかった。
作中人物の人格や感情を見事に表現した衣装や美術の色彩も見事。予告編でも使われていたブリトニー・スピアーズの「Toxic」のアレンジも使い方含めて最高です。
ただ、女性目線で覗く醜悪な男性性がリアルに露呈しているので、この手のトラウマがある人にはキツイかも知れない。でも必要な映画とはこういうものだと思う
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