まつり

プロミシング・ヤング・ウーマンのまつりのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

思ったより全然ポップじゃなかった!
でもそうみせるマーケティングの価値も感じた!
エンドロールでいろんな考えが巡って号泣した。最後にタイトルが流れてきてまた泣いた。
プロミシングヤングウーマン、成功を約束された女性の人生。
そんな彼女達の命の話。

ハーレイクインみたいにイカしてクソみたいなセクシストをボコボコにしてくれることを期待していた。
なのにちゃんと悩むシーンも入れるんだもん。車の中で息をつくシーンを入れるんだもん。ニーナを覚えている人を前に動揺してしまうシーンも入れるんだもん。泣いてしまうよ。
フェミニストや差別反対を訴える人間を怒り狂った怖い人だとイメージしてる人たちがいるかもしれないけど、そんなことない。そうじゃない人生が選べるなら選びたかった。何かが奪われるから、奪われたからあんなに声をあげているんだ。
本当は「ふつうに」楽しく生きたかったし、自然とデートを楽しみたかったよな。
中盤のいちゃいちゃシーンはなんだ?って思ってみてたけど、描いた背景がわかってからはズドンと落とされた。あれはifの世界線。自然とあのストーリーにいける世界で生きてみたいよな。
そんな感情が終わってから溢れてどうにもならなくなった。 

この展開は賛否が分かれるのだろう。
彼女の死を描かないと与えられないインパクトもあっただろう。
でも、死なないと完遂できない復讐があっていいのだろうか。罪を罪としてこの社会に認めさせる、という段階に命を燃やしてしまっていいんだろうか。
「先」を考えた時、多くの復讐相手にどれだけ爪痕が残せるのだろうか。忘れられる彼女、彼らの心には、殺人の罪しか残らないのではないだろうか。
自分自身が本気で「私が死んだらこの人たちは自分の認識がもたらす罪に気づくだろうか、反省するだろうか」と思いながら生きているからこそ、この話が許せない。
死ななくても私たちには復讐のチャンスがあると、できることがあると、そう思わせてくれるストーリーは、他の作品に望むべきなのだろうか。

そして死にショックを受けつつも、泥酔し「お持ち帰り」をしてきた男たちがシラフに気づいたシーンで誰も暴力を振るわない、多くの暴言を吐かないことには違和感を抱いた。
それだけ「普通」の人物として描きたかったのだろうか。あの段階で無理矢理襲う人間が出たらストーリー上邪魔だと思うけど、いつ襲われても、もっと酷い目にあっても「仕方ない」状況すぎて最初からはらはらした。少なくとも真似できない。
お決まりの「綺麗だ」には笑えたけど。

絵が綺麗。音楽も綺麗。テンポもいい。
終始印象的だったネイルもすてきだった。
ただ、このストーリーがどれだけ周囲の観客に伝わるのだろうかと思いながら見た。
「酔ってる方が悪い」「落ち度があった」「彼は良い人だ」って言ってしまう人が見て、ハッとする作品ではないように見えた。
むしろ、そんなことで人生無駄にするなんて、って声が自分の中からは消えなかった。残念ながら。

インパクトはある映画だと思う。し、全国区でTOHO系で見られることの価値はめちゃくちゃ感じる、
私には想像できる人の顔も自分の経験もあるからガクガクに気持ちを揺さぶられている。
でも他の人はどうだろうか。ただの胸糞映画で終わってしまうのではないだろうか。

ライアンを許して結婚することを「ハッピーエンド」だと信じてやまない母親のような人の方が多いのではないだろうか。
父親のように「精神不安定」だと、多くの男性達のように「狂ってる」というフィルター越しでしか彼女を見られない人たちがいるんじゃないだろうか。

そんな疑問が残ってしまう作品でした。

でも平日夜に性別年代幅広い人が見にきていたことには少し救われたよ。
まつり

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