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プロミシング・ヤング・ウーマンのymmtdiskのレビュー・感想・評価

4.5
性暴力の全方位への復讐を中心に据え、スリラーとラブコメを行き来するすごい映画。加害は当然、傍観すら許さない。

「未来を約束された女性(プロミシング・ヤング・ウーマン)」だったキャシーは、ある事件により大学を中退し、コーヒーショップの店員として働きながら、夜はクラブで泥酔した振りをして、送り狼の男どもに裁きを下している。ある日、コーヒーショップに、かつて大学で同級生だったライアンが偶然現れて……と、ここからもすごい。

この映画は直接的に語りかけてくる。性暴力のニュースを見て、「男性(加害者)にもちゃんと話を聞いた方がいい」とか「とはいえ女性(被害者)にも隙があったんじゃないの?」とか思ったりしなかったか。もっと身近なところでは、お酒で失敗する女の子と聞いて「そういう女の子なんだ」という認識をしなかったか。泥酔した女の子をお持ち帰りしたことがなくとも、それが羨ましいと思ったことがなかったか。というか「ワンチャン」ってなんだよ。
エンドロールを「どうしたらいいんだ……」という感情で見て(そしてエンドロール後になにか救いがないかと叶わない期待も抱いて)、それでも面白かったと思える映画はこれまでなかったと思う。すげえ。

宇垣総裁がこの映画に関してラジオで放った言葉、私としては、もうこれ以上もこれ以下もないと思う。
(性別関係なく、全員に対して)
「関係ないみたいな顔できる奴がいるんだったら連れて来いよ」
;)

以下、雑感。

正面から捉えているのに視線を外へずらす構図、照明や壁の装飾などをキャシーと重ねる構図にすることで「聖人」や「天使」のように見せる仕掛けなど、演出が印象的で美しい。それによって、ストーリーの寓話性も高まっている。

「女性は抑圧されているよね、俺は他の男とは違うよ、ジェンダーについても勉強しているし」とか言いながら、やっていることは他の男と同じ送り狼。この映画はカースト上位のクソ野郎どもだけでなく、カースト中下位のクソ野郎どもにも等しく刃を振りかざす。全方位、逃げ場なし。

ただ、セックスも暴力も直接的なシーンはないに等しく(対人の暴力描写は1回のみ)、「あった」ことを示唆するまでに留めている(キャシーが手帳に記す赤い線、とか)。これは被害者のフラッシュバックへの配慮であったり、「セックスやバイオレンスがある映画」という安直な消費から遠ざけるためでもあるようだ。すごく考えられている。

というかキャリー・マリガンすごいな。(語彙力の欠如)
ラバーン・コックスの存在感も確かにいいなぁ。