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プロミシング・ヤング・ウーマンのt0moriのレビュー・感想・評価

4.8
指向性としては昨年の『ハスラー』に近いけれど、こちらの方がずっと身近で辛辣。何よりこれは、男性だけではなく女性も含めたすべての人(もちろん自分も含む)に、家族を含めた社会全体に、過去の振る舞いや足元を見ることを促す作りになっている。まずは脚本がお見事。

加えて復讐ゲーム(あえてこう書くけど)から始まる導入から中盤にかけては、一見、ポップな必殺シリーズの趣なのだけど、観客をカタルシスには決して導かない。絶妙な匙加減の演出が保たれていて、感心した。そもそもシラフと分かるだけで怖気付く、というそれまでの行為の愚劣さが際立つお仕置きが秀逸であった。

それでいて物語運びも、誤解を恐れず書くなら非常に「面白く」出来ていて、クライマックスに起きたある出来事を観ながら、心臓をギューッと掴まれた感じがあり、息が苦しく唇を噛んだ。

キャリー・マリガンが良いのは当然として、衣装、美術も素晴らしかった。本作のポップな色使いと対照的な実家のインテリア、中盤のある人の執務室の厳格な雰囲気のセット、ラストのオーガニックな様相の結婚式などには、明確な意図が感じられた。あと、パリス・ヒルトンやブリトニー・スピアーズの引用も!

後味がビター過ぎて万人にオススメ出来る映画じゃないけど、万人に観て欲しい映画だった。
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