クノール

プロミシング・ヤング・ウーマンのクノールのレビュー・感想・評価

4.5
ポップで、だからこそ悲惨さが極まって面白かった。悲しいかな世の中のパワーバランスでは「promising(将来有望な)」若い女性より、男性が味方され将来が保証されてきた。暴力に関しても、女性の訴えは聞き入れられず、見過ごされるか小虫を潰すようにもみ消されることが往々にしてある。#MeToo運動を端緒として、男性優位の世の中の仕組みを再考する動きは広まってはいるが、この映画が痛烈なのは、性犯罪を「黙過」するのは男性だけでなく女性も含まれるという事実を語っている点だろう。現場にいながら周りとともにそれを笑い、あるいは傍観し、最終的には保身して口をつぐむ。そういう人間は男女を問わず、やはり大多数存在する。だから「運動」する者を決して馬鹿にしたり笑ってはいけないのだと思う。

キャリー・マリガンは、大人びて知性があるが危うい無垢さもあった『17歳の肖像』から何枚もレイヤーを重ねた厚みある女優になったなとしみじみ。パステルのネイルやワンピースなどティーン趣味かと思えば、夜は露出高めの服装で酩酊状態の"Bitch"を演じて持ち帰り男を懲らしめ、映画の終盤ではセクシーなドクターコスチュームに着替えたり、決戦へのメイクアップのシーンが「戦う女の子」を思わせて、こういう箇所が結構好き。

パリス・ヒルトンの曲に合わせて男が踊り出す、あのミュージカルシーンはかなり皮肉が効いているのと、コーヒーショップのオーナーのラバーン・コックスがかなり良い役。
クノール

クノール