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プロミシング・ヤング・ウーマンのYOUのレビュー・感想・評価

4.3
エメラルド・フェネルが監督・脚本を務めた、2020年公開のダークコメディ・スリラー。
女優、小説家、劇作家など幅広く活躍するエメラルド・フェネルの長編監督デビュー作となる本作は、第93回アカデミー賞にて脚本賞を受賞する他、作品賞や監督賞など5部門にノミネートされた作品とのこと。あらすじやポスターからある程度受け取れるような「リベンジ・スリラー」や「ガールズ・エンパワーメント映画」といった枠組みを”大きく上回った”というか”更に研ぎ澄ました”というか、とにかく事前の予想を何倍も何十倍も超えた”あらゆる意味でとてつもない強度を誇る一作”だという風に思います。本作は”復讐劇”という典型的なプロットを主軸にしつつも「加害者男性vs被害者女性」という単純化された図式には落とし込んでおらず、むしろそれらを側から傍観している立場、すなわちこの作品を安全圏から鑑賞している我々観客の心理こそが鋭く問い質されます。アメリカの青春学園コメディなどでよく目にする「若い男女が酒やドラッグでバカ騒ぎするホームパーティーシーン」、日本人かつ田舎出身かつ人見知りかつ友達の少ない自分にとっては全く馴染みは無いものの、そういう作品を自分も同じようにバカな気分で楽しんで観ていました。しかしそれらはあくまで男性主観、男性中心主義的な描き方であって、「それを女性側の視点で捉えるとこういう事態にもなり得るんだぞ」と強く突きつけられたような感覚です。こうした社会全体のマッチョイズムや男同士の連帯感・仲間意識、劇中同様「俺は悪くない」と心底思い込んでいる”無実の傍観者”などといった「無意識の性差別」は日本でも未だ根強く蔓延っているのが現状ですし、本作はそういった男性的価値観に基づく”ヤンチャな青春”、またはそれを”時間が解決してくれる”という軽率な意識を決して許さず、その”明らかな加害者性”を容赦なく暴き立てています。

また本作では主人公キャシーがあえて「主人公たる存在」としては造形されていません。殺しのスキルが高いだとか過去のトラウマを抱えて生きているなどといった明確な主人公像からはむしろ距離が置かれており、これにより前述した「無意識の性差別」が更にクローズアップされています。また意外にも直接的な性描写は一切無く、キャシーが復讐を誓うきっかけともなる”ある動画”でさえもその内容は全く描写されません。ただこれにより性差別の実情がより現実性を持って受け取れますし、観客に対して「俺は悪くない」という意識を助長させる余地を一切排除しています。とにかく徹頭徹尾容赦も隙も全く無い!ラストの切れ味も見事なものですし、私はもうこれを「フェミニズム映画」と呼ぶのがおこがましいです。「女性側に平等を主張させるよりも、お前ら男が少しは謙虚になれよ!」というスタンス、これこそが私が本作に感じた”圧倒的強度”の部分で、本作以降はフェミニズム映画やガールズ・エンパワーメント映画が一層作りやすく、なおかつ力強くなっていくのではないかとすら思いますね。文句なしに面白い一作でした!脚本賞受賞おめでとう!









































































































「イカしたガールズがカート・ラッセルをボコって”THE END”」に次いで好きなエンディングかもしれない。キレがあればある程ベタ褒めしてしまう。
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