福福吉吉

選ばなかったみちの福福吉吉のレビュー・感想・評価

選ばなかったみち(2020年製作の映画)
3.5
作家のレオ(ハビエル・バルデム)は認知症を患い、娘のモリー(エル・ファニング)やヘルパーに介護されているが、他人と意思疎通ができない状態にあった。ある日、モリーとともに外出するレオだったが、過去の記憶と現実を把握できないレオはモリーの手を煩わせ、モリーの仕事にも悪影響を与えてしまう。

認知症のレオが過去の記憶や幻想(※)と現実の間を往来しながら過ごす一日を描いた作品となっており、介護するモリーたちや対応する人々の困難も併せて描かれています。ストーリー展開としてレオの現実と過去を頻繁の往来するため、なかなか理解しにくいものになっていました。

(※)おそらく過去にレオ自身が経験していないものもあるように感じたので「幻想」としました。

本作の場合、映像で示されているレオの過去があるので少しはレオの心情が分かるものの、どうしても理解し得ない部分がありました。題名のとおり、レオが選んだ道、選ばなかった道が過去として描かれていたのですが、虚実の区別が非常に難しく感じました。それでもレオの過去の奥底にある悲しみの情景が分かったとき、とても心を揺さぶられました。

レオの娘モリーの心情は非常に分かりやすく、レオを父として大事にする気持ち、献身的な行動とともに上手く行かない歯がゆさ、その結果、プライベートまで影響してしまう様子など現実的で良かったと思います。ラストのシーンはモリーの選んだ道と選ばなかった道が描かれていてしっくりきました。

家族と言えど、認知症の方と付き合うことの難しさはあるし、その方が何を望んでいるのか把握することは出来ないと思います。それでもやっぱり家族だから最後まで一緒にいたい。そんな風に思いました。
ハビエル・バルデムとエル・ファニングの好演が光る作品でした。重いテーマですが、観て良かったと思います。

鑑賞日:2023年3月22日
鑑賞方法:CS ムービープラス
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