永遠の寂しんぼ

STAND BY ME ドラえもん2の永遠の寂しんぼのレビュー・感想・評価

STAND BY ME ドラえもん2(2020年製作の映画)
3.8
『そんなに悪い映画じゃない』

今更ですが11月末に観てました。
2014年の前作は観てないので今作単体での感想になります。
個人的にはCGキャラの見た目を受け入れて細かい所に目をつぶれば十分楽しめた良作だと想います。
はっきり言って映画ファン、特にドラえもんの原作ファンからの評価はボロボロで、某映画レビューの人なんか、「救いようのない駄作」とまで。正直ここまでの悪評は悲しかったです。

確かにこの映画は価値観やドラえもん作品に対する想いの違いで賛否が分かれるポイントが幾つもあるボロボロの吊り橋みたいな作品で、人によって評価が天と地ほども差が出てしまうと思います。で、僕はたまたまその吊り橋を渡り切れちゃった人間なんです。

まず僕が良かったと思った点について
○楽しいCG演出
ひみつ道具、未来の街並み、タイムマシン...今作のCGはとにかく見てて楽しい。ファンタジー感のあるCGとゴリゴリのSF作品っぽいCGの中道を行く、ドラえもんらしい「すこしふしぎ」なデザインのCGばかりでとてもワクワクしました。
○中盤のコミカルなやり取り
子ども時代に行った大人のび太とジャイアン達のやり取りは普通に面白くてマスク越しにケラケラ笑ってました。CGだと特に子どものび太の見た目が少しリアル過ぎて若干抵抗があるものの、ちゃんと僕が子供の頃に見たドラえもんの延長上にある作品だなぁ、と感じました。

ではこの作品で特に叩かれている点について僕がどう思ったかを書きます。
○大人のび太について
一番評判が悪いのは大人のび太の言動の数々。まるで成長してないとかしずかちゃんが可哀想とか云々。確かにそう見えるけれど今作の大人のび太は25歳くらい。25歳ならまだ迷いや失敗、だらしない部分を描くのもありなのでは?結婚式も結果的に逃げた事になっただけで戻る気ではいたし。「結婚相手が僕でいいのか?」と悩むのも、のび太らしい他人を思いやれる気持ちからだと思うし。
まあ、この大人のび太が大嫌いな人達は、しずかちゃんを思いやれるまともな大人なら、そもそも逃げ出さないと言い張るんでしょうが...。僕ものび太に負けないくらいのダメ人間で、色んな事から逃げたり放置してきたので、どうしても大人のび太にシンパシーを感じてしまい、子どもの頃の元からあった優しささえあれば、大人になってもダメな奴でもいいんじゃないの?と思ってしまいます。
○おばあちゃんの夢について
僕は原作で叶わなかったおばあちゃんの夢を叶えてあげる、というお話は十分ありだと想います。藤子プロが許可さえだせば、原作を超えた色んな創作があっていいと思う。
○原作との違いについて
僕はドラえもんは昔から大好きだけど、原作原理主義者ではない。おそらく本作に怒っている人達は「のび太の結婚前夜」に出てくるような、ダメなトコもあるけどちゃんと大人になったのび太が見れなかった事が原因だと思います。たしかに藤子先生のドラえもん原作は偉大な作品ですが、その後に続く創作が全てしっかりと原作に沿ったものでなければいけないのかな?と疑問に思います。ドラえもんくらい多くの人に知られた作品なら、色んな可能性を探ってもいいと思う。
○しずかちゃんについて
原作でもアニメでも、あれだけのび太がしずかちゃんが好きな事を描いてきたのだから、そのゴールが結婚なのは何もおかしくないと思う。確かに今作の彼女は聖女過ぎる面が目立つけれど、子ども時代も大人になってものび太の優しさや心の強さを見つめてくれているのは今までと一緒。みんなに嫌われている「そのままでいいの」発言も、あれは喧嘩してボロボロになった大人のび太に「無茶しないで」の意味で言っただけで、大人のび太のダメっぷりを許容したワケじゃない。ストーリーの流れ的にそう見えてしまうのがこの作品の欠点だとは思うけれど。
○結婚式について
披露宴じゃなく結婚式から本物の大人のび太でやり直せば、ちょっとは怒る人が減ったかも。でも最後のスピーチやおばあちゃんも良かった。そもそも僕は、結婚式はあくまで形式的な通過儀礼で、本当に価値があるのはその後の2人の夫婦生活でしょ?とか思ってる人間なので、結婚式が失敗だらけでもあまり怒りを感じないというのはある。エンドロールで2人は幸せそうだったし。

感動を押し付けてるだのと前作の評判が良くなかったので、正直今作を観る前は批判する側になるかなと思ってましたが、まさか擁護する側につくことになるとは。前作は分かりませんが今作はそこまで感動や涙を強要するようなシーンはなかったと思う。
欠点はあるものの、僕は今まで見てきたドラえもん映画に大きく劣ることはない作品だと思います。