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ナショナル・シアター・ライヴ 2020 「プレゼント・ラフター」のmoviefrogのレビュー・感想・評価

4.0
ノエル・カワードの戯曲が現代にこんな形で成立するとは思いもしなかった。イギリスの演劇人の才能に圧倒された。

主演のアンドリュー・スコットはゲイをカミングアウトしていて、2014年の「パレードへようこそ」の演技も印象的。サー・ノエル・カワードはゲイであった人だが1939年発表の戯曲「プレゼント・ラフター」にLGBTQの要素は入っていない。それが許されなかった時代だから当然そこは当たり前。

しかし今回の上演にあたっては、主人公はバイセクシャルであるという改変が行われている。そういうやり方があるか!というのが自分にとっては最大の驚きで、才能のある人は着眼点からして違うんだなと思い知らされる。

ノエル・カワード作品特有のセリフの洪水に、大混乱の恋愛模様がすさまじい。我儘でかまってちゃんで、虚実の境界が曖昧なスター俳優が、訳の分からない精神状態に突き進んでいくというファースで、観劇しているだけでカロリーを消費するような激しさ。

でも笑いながらも、この主人公の空しさが可哀想になってくる。現代ならこのあとでドラッグの問題に突き進んでいくんだろうなという怖さもある。これほど昔の作品でも、こういう風にアップデートすれば充分現代の作品と拮抗できる。ナショナルシアターの企画力が本当に凄い。
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