かず

ナショナル・シアター・ライヴ 2020 「リーマン・トリロジー」のかずのレビュー・感想・評価

4.5
ひとりサム・メンデス監督祭り。
リーマンブラザーズの創業者であるリーマン3兄弟がドイツからアメリカに移民としてやって来てから2008年金融危機にリーマンブラザーズが倒産するまでのリーマン家の栄枯盛衰を、三幕構成で、3人の俳優+ピアノ演奏だけで描く舞台。
ピアノ音楽による物語推進・心情説明が美しくて素晴らしかった。ライティングや背景のプロジェクションの使い方も巧くて、この辺のエモーショナルな演出は、さすがサム・メンデス監督!

221分と長いが、20分×2回の休憩ありだし、笑える場面も多いので、全然大丈夫だった。

綿農園の農具売りの店から始めたリーマン兄弟が綿の転売のブローカー(仲買人)になり、扱う商品が鉄、コーヒー、鉄道、そして金へと変遷していく様を、当時の産業発展・時代背景とともに見られておもしろかった。

中盤に地元を救済するために知事と交渉して公的資金で地元復興するために投資銀行をはじめるのだが、最終的に、「金を産むのは金だ!」ということで金融会社になる様が、資本主義の成れの果てを見ているようで悲しくなった。
創業3兄弟の迎える最期も、邪険に扱われて体良く追い出されたり、時代に追いつけなくなったりと、虚しい。

冒頭に「明朝6時までに再生案が出なければリーマンブラザーズは倒産です」的なニュースの音声が流れるが、ちゃんとラストに時計が6時前を指しているのがすごかった。

『ゴッドファーザー』好きな人なら好きかも。
基本的にはビジネスの発展の話なので、ビジネスパーソンにもおすすめ。
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