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野蛮人として歴史に名を残しても構わないのleylaのレビュー・感想・評価

3.9
ルーマニアのラドゥ・ジューデ監督作品。初めての鑑賞です。強烈なメッセージ性を感じ、かなり策士という印象。

タイトルは、第二次世界大戦中のルーマニアの国家指導者アントネスク元帥が述べた言葉の引用。

主役のイオアナ・ヤコブさんが本名を自己紹介するシーンから始まるメタなつくりです。

現在のウクライナ南部のオデッサで起きたルーマニア軍によるユダヤ人の大虐殺を、マリアーナ(イオアナ・ヤコブ)という女性が舞台監督としてイベントのショーで再現し、そのリハから本番までを見せていきます。

歴史を美化して伝えるかつてのルーマニア政府が今のロシアと重なりました。

👇以下、ネタバレ含みます⚠️










一般市民で構成した俳優たちの愚痴だったり、役人との反対意見のやりとりだったり、彼氏との妊娠騒動などのエピソードを挟みながら、クライマックスは本番の劇中劇となる。

ショーは街の広場で市民の前で行う。公には詳細を伏せたゲリラ的なショーです。
リハではグダグダしていた役者たちが本番は別人のようで見応えがあり、観客の気分で鑑賞しました。

マリアーナは、ルーマニア人がユダヤ人を虐殺したことをもっと認識すべきだとこの演出をしたけれど、観客が彼女の意図とは逆の反応をする皮肉な結果に。

「ユダヤ人が燃やされるシーンで、観客が拍手をするのが怖かった」とマリアーナは言います。
やっぱり差別や戦争はこの先もなくならないのだと思わせるラストシーン。

当時の実際の映像や写真を挿入したり、ユダヤ人だけでなくロマへの差別も言葉にしていて、事実を伝えるために立ち上がった監督なのだと思いました。冷静な目と熱い怒りを作品から感じます。

ひと癖ある反戦メッセージで、他の作品にも興味が湧きました。
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