ブタブタ

るろうに剣心 最終章 The Beginningのブタブタのレビュー・感想・評価

3.0
コロナ禍による約1年の延期を経てようやっと公開でシリーズ完結。
まずは目出度い。
基本ラブストーリーで菅田将暉が佐藤健に変わってるだけで『花束みたいな恋をした』ってこんな感じでは?
(花束~見てないんですが)
二人の出会いとその終わりって感じで。
思い切りハードル下げてたせいか面白かったです。
『伝説の最後』が福山雅治=比古清十郎にあれ程時間を割いてるに関わらず比古清十郎が全く機能してない存在自体意味無いという摩訶不思議映画だったので今度は有村架純さんに時間を割いた事でそういう事になってしまうかと思ってたので。

『Final』では面白い部分がほぼ前半の前半辺りで終わってしまったけど、この『beginning』では忍者みたいな幕府の暗殺集団との戦いがクライマックスの方にあったのでバトル物としてもちゃんと最後に盛り上がった。
雪が舞い散る山中で罠だらけ仕掛けだらけのの中に剣心を誘い込んでのバトルは『ランボー』を逆にしたみたいで精神的ダメージ✖️罠&暗殺集団の総攻撃で剣心がこれ程追い詰められたのは映画版るろ剣のラストバトルとして充分満足だった。
ただ北村一輝演じるラスボスが死亡フラグ辞典にも載ってた典型的な「冥土の土産に教えてやる(死亡)」タイプの死に様。
あの状態の剣心に何で負けるの?って。
其れは剣心が「主人公」だからって言ったら身も蓋もないけど。

尚個人的に特筆すべきは新撰組の隊服のデザイン。
あの有名な新撰組隊服、「浅葱色のダンダラ羽織」は色んな映像作品でアレンジされたり全く違うオリジナルデザインだったり、大島渚監督『御法度』ではオスカーデザイナー・ワダエミによるナチス親衛隊を和服にしたみたいな制服もよかったけど、同じくオスカー取ったデザイナー・石岡瑛子がデザインしてたら又違った斬新かつ素晴らしいデザインの新撰組になっていたのでは(話が逸れました)
この実写版『るろうに剣心』は作者の和月伸宏先生がファンであるアメコミからの影響を受けた派手で色鮮やかなコスチュームやデザインの原作のタッチを一切捨てて、モノクロームに近いダークかつリアリズムに徹した、人も背景や建物に至るまで墨絵みたいな徹底的に彩度を落とした、様式美とも言える「ヨゴシ」の美術デザインで統一されてて、其れが原作やアニメとは違うオリジナリティを持った実写版『るろうに剣心』の世界を作り上げている。
で、今回そのダークな世界にあって新撰組のあの「浅葱色のダンダラ羽織」だけが材質は絹の様にツヤツヤで鮮やかに浮かび上がり、ロングコート位足首辺り迄ある長さ、非常に薄い布地で縫製されているのか隊士が歩けばドレスの様にフワ~っと靡いていく。
色も明るい半透明に近い鮮やかな水色でまるで羽織だけが薄暗い世界の中で発光してるのかの様。
幕末の京に現れた「人斬り集団」としての新撰組の異様さや独特の統一された美意識みたいな物を持っており、あの羽織のデザインは演出面でも素晴らしかったと思う。
そして新撰組・一番隊組長(キャー!(*´>д<))村上虹郎演じる沖田総司はやっぱり凄かったし最高の沖田総司だった。
村上虹郎って本当に美しいな~。
なんていうかゾクッとする様な色気がある。
現代の若者なのに昔の役者、市川雷蔵や若き頃の田村正和みたいな雰囲気がある。
そして当然沖田総司だからメチャクチャ強い。
剣心と完全に互角の剣士であり対決シーンは本作最大の見せ場。
それ故に終わった瞬間「ああもうこれでこの映画の一番面白い所は終わったな…(´Д`)」と思ったけど。
それから土方歳三がほぼ活躍なく空気だったのが残念。

贅沢言ったらキリがないけど
志々雄真実=藤原竜也
鵜堂刃衛=吉川晃司
の二人を出して欲しかった。
桂小五郎(高橋一生)のセリフで最後にちょっと志々雄については触れられたけどミイラ男前の志々雄真実、抜刀斎の代わりとして抜擢され冷酷非情かつ権力欲と野心の塊の志々雄真実を出して欲しかった。
それから鵜堂刃衛は元々新撰組隊士、ただ人が斬りたいからその為に新撰組入ってただけって完全な狂人時代の鵜堂刃衛。

最後は第一作の冒頭にまた戻る。
終わりでありまた始まりであるウロボロスの蛇の形で幕を閉じる。
円環の構造を持つ事によって五本の作品が全て繋がった一本の長大なサーガであり、人斬り抜刀斎が流浪人剣心へと至る迄の物語が完結した。
ルーカスによるスターウォーズ六部作はダースベイダーが最後にアナキン・スカイウォーカーに戻る迄の話し。
しかし公開順だとエピソード3が最後なのでアナキン・スカイウォーカーがダースベイダーになるお話しで、実写版『るろうに剣心』五部作も流浪人・剣心が緋村抜刀斎だった過去編がラスト・エピソードで最後に第一作冒頭に戻る。
そしてこれから『るろうに剣心』本編が始まる所でエンドと、壮大なサーガとしての物語の終わりと始まりを同時に描く、最終作として見事な締めくくりだったと思う。

あとそれから原作の単行本『るろうに剣心・完全版』はカバーを捲ると和月伸宏による大量のキャラクターデザインのリニューアル、未登場キャラクターの設定とデザインが載ってて、中でもかの有名な人斬り・岡田以蔵は「人を斬りすぎて人間でいられなくなり時間や空間を幽霊の様に移動する」って見かけも貞子みたいな完全なバケモノでこの岡田以蔵を実写で見たかった。
映画版は原作とはリアリティラインが違うので絶対無理だったとは思うけど。
とは云え実写版『るろうに剣心』はこれにて完結。
ジャンプ漫画実写版映画として大成功作品だった。
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