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るろうに剣心 最終章 The Beginningのよーだ育休準備中のレビュー・感想・評価

3.0
元治元年、幕末の京は諸藩から集まった志士たちの様々な思惑が渦巻く動乱の只中にあった。倒幕派の有力藩である長州には《人斬り抜刀斎》と恐れられる幕末最強の剣客がおり、夜毎に佐幕派の要人を斬って回っていた。ある晩、酔った会津藩士に絡まれていた女性を助けたことで、剣心の運命が大きく動く事となる。


◆他のシリーズ作品とは雰囲気が違う。

原作漫画の《追憶編》を実写化した作品らしいのですが、読んだ記憶がございません。作品内における立ち位置としては、剣心が京都で《人斬り》として暗躍していた時期。《人誅編》のヒールである雪代縁との因縁と、のちに剣心が《不殺の誓い》をたてる契機となった出来事を描いた作品のようです。

幕末の京を舞台に、長州藩の桂小五郎や壬生浪こと新撰組(牙突でお馴染みの斎藤一も)が登場。池田屋事件や禁門の変など史実と絡めて進んでいくので、過去の作品よりも《時代劇》のようなテイストが濃かった。シリーズの他作品と比べてもフィクションとノンフィクションとの境界が曖昧で、中途半端な仕上がりになってしまい、実写化シリーズの中でもかなり浮いて見えました。時代劇としては漫画的すぎるし、エンタメ作品としては見所が少ない気がしました。原作漫画が良かったのだとすれば、メディアの違いだったのでしょうか。実写化するには不向きなパートだったのではないかと思います。


◆声量もアクションも控えめな剣心。

アクションシーンはすごい。これは今作でも変わりません。しかも今作で剣心が握っているのは逆刃刀では無く真剣でしたので、殺陣の迫力は段違い。冒頭から対馬藩邸を血の海に染め上げる様子は、幕末にその名を轟かせた《人斬り抜刀斎》の恐ろしさを表現するに相応しい一幕でした。

しかしながら、今作においてアクションシーンはかなり控えめ。緋村剣心が雪代巴との穏やかな生活の中で心の角が取れていく様子が中心に描かれていたので、アクションの見せ場はほとんど無いに等しい。剣心を演じた佐藤健も、監督の演技指導によるものか知りませんが終始陰気で暗い。悲しい結末に向かって行く作品なのはわかりますが、ぼそぼそ喋っていて何と言っているのか聞き取れないのはいかがなものか。…耳が遠くなったのかな。

反面、ヒロインを演じた有村架純はとても良かった。儚げで透き通るような雰囲気と、復讐心と思慕の情との間で静かに葛藤する様子がしっかり出ていた。ただし、彼女が素晴らしい演技をすればするほど、アクションエンタメとしての今作の良さが失われていくという悲しいジレンマがありました。従来の様なアクション作品では無く、悲恋を主軸に据えたロマンス作品だと言われてしまえばそれまでですが。