wisteria

17歳の瞳に映る世界のwisteriaのレビュー・感想・評価

17歳の瞳に映る世界(2020年製作の映画)
4.3
Amazon prime見放題配信中!
ということで初鑑賞。

ペンシルバニア州に住む17歳の少女オータムが、望まない妊娠の人工妊娠中絶を受けるために従姉妹のスカイラーの助けを借りつつ、手術に親の許可を必要としないニューヨークを目指すロードムービー風のお話。

この話の前提として、アメリカ🇺🇸は州によって中絶に対する法的扱いが異なることをおさえておく必要がある。しかもつい先日、米国最高裁が中絶権を認めた重要判決を覆す草案を用意していることがリークされるニュースが出たりして、人工妊娠中絶が「違憲」となりかねないという事態となっているという。そういうわけで、期せずして、本作はとても時宜にかなった内容の作品ともなっている。

オータムが妊娠に至った背景や状況を伝える台詞がとても少なく、寡黙な少女たちの視線から捉えたミニマルな描写で話は進行していく。随所に道行く男性達からの好奇の目線が彼女たちに照射されるのが観ていてあまりに痛々しい。。ドキュメンタリー調の撮影がとても素晴らしいのだけど、誰かなと思ったら『ロスト・ドーター』と同じエレーヌ・ルヴァールということで、なるほどと納得。

かつて斎藤美奈子の『妊娠小説』という、『舞姫』から『風の歌を聴け』までの望まない妊娠の日本文学における表象を論じた評論を読んだことがあるけど、アメリカだと宗教的な背景もあいまっていっそう複雑な事情があるだろうなと考えさせられた。類似した状況を扱っている『JUNO / ジュノ』との描き方の調子や結末の違いから、比べてみるのも面白そうだ。

原題"Never Rarely Sometimes Always"は頻度を表す副詞を羅列したものだけど、これは本作の緊迫感ある見どころの一つであるカウンセラーとの対面質問で使われる性的経験に関する4択選択式の回答から来ている。このタイトルは本作の硬質な雰囲気とぴったりで、邦題はあまりに情緒的にすぎるきらいはある。
wisteria

wisteria