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17歳の瞳に映る世界のtsukikoのネタバレレビュー・内容・結末

17歳の瞳に映る世界(2020年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

映画「17歳の瞳に映る世界」鑑賞。

思いがけず妊娠した主人公が、中絶に親の同意が必要な米・ペンシルベニア州から未成年でも同意なしで中絶できるニューヨーク州に従姉妹と長距離バスで向かい、紆余曲折ありながらも完遂する話。

まず社会背景として、アメリカでは信じられない話だけど中絶禁止の州がいくつもある。例えレイプされても堕ろせないので隣の州に足を運んで手術を受けることになるんだけど、無意味すぎる。

女性の人権を完全に無視した法律にめまいがしそうなんだけど、本作の舞台となるペンシルベニア州ではまだ中絶禁止ではない。ただし、未成年は親の同意が必要。

主人公は誰かの性暴力によって妊娠したことが中盤でそれとなく描かれていて、このシーンがキモでもある。その内容や、家族とのシーンから相手は義父であることがうかがえる。

この映画はたびたびおなかの父親が誰かで議論になるが、義父という設定、雌犬だと揶揄された主人公の目の前で飼い犬を雌犬だと言いながら撫で回すシーンなど、ヒントは多く隠されている。

また、主人公が14歳で初体験し、17歳までに6人と関係を持ち、AFまで経験済みということからも性的に若干早熟で、学校の男子な雌犬だと罵られることから、それを知った義父につけ込まれた可能性は大いに考えられる。ちなみに学校の揶揄してきた男子は、主人公を支配してるようには見えず、主人公も反撃してるとこを見ると一度だけやってみたとかその程度の相手かと。

それにしても、こういうパターンの母親がとぼけていたり、ぞっとするくらい冷酷だったりする様子にはいつも寒気がする。今回は前者で、わずかな描写から夫とは関係良好であることがうかがえる。だから主人公は母親に助けを求められない。

本作ではとにかく悪気なく(いや、あるのか?)出来心で女を搾取する男達の姿が露悪的に描かれている。“かわいい弱者”を当然の権利と言わんばかりに踏み躙り薄ら笑いを浮かべる男たち。あれが彼女たちの見る世界に生きる男たちなのだろう。

原題は「Never Rarely Sometimes Always」。本当に秀逸。その理由は…ぜひ見てみて。

最後に、私は中絶する権利はたとえ未成年であっても本人にのみあると思っている。理由は親が敵であることがザラだから。

日本でも母体保護法により相手の男性の同意が必要だというクソみたいな法律があるんだけど、信念から同意書なしで中絶を実施している医師もいる。だってDVから逃げてきた人は相手から同意取れないしね。

というわけで、いろいろ考えさせられる良い映画でした。オススメ。
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