このレビューはネタバレを含みます
セリフの少なさ
不自然な会話のなさ
むりやり大きな山場を作ったりしない
作品として好みすぎる。
なにしろこのロードムービーは、主人公が置かれてる境遇を何一つ説明しない。そう考えれば「マッドマックス/怒りのデス・ロード」はあれだけ削ぎ落とした作品だったのに、まだ冗長な部分が見えてくる。
これほどまでに、旅の目的地であるNYを絶望的に描いた作品があっただろうか。その点は、産業喪失の街ペンシルベニアと何も変わらない。バイト先でお買い上げ金を経理に渡すたびに手に粘着気味のキスをされる日常と何も変わらない。文化祭で「愛の支配者は彼だ」と歌えば「メス犬」と呼ばれる日常と。
微かな希望を探して。
たとえその希望が、手を握ることだけであっても。たとえ一本の指だけであっても。
理解者はただひとり。
そのひとりもまた、器用に見えながらも自分を削られることを理解しながら生きていた。
カラオケで歌う歌詞が身につまされる。
「涙を太陽になんか見せない」
そして、今から受ける手術の名前を口にする。
境遇はなんら変わらない。
でも、微かな希望、一条の光の中に救いはあった。
だから泣くのは今日までだ。
自分で選ぶのだ、明日からの人生は。
この勇敢な旅をこしらえた制作陣に敬意を表し、作品の内容にはあまり触れません。
原題が強い。が、これを日本語タイトルにするのは困難だ。それを諦めた会議室の光景が見える、僕には見えるぞ!