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Downhill(原題)のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

Downhill(原題)(2020年製作の映画)
1.5
【軽率過ぎる『フレンチアルプスで起きたこと』】
昨今、世界中映画のネタ不足に陥り、国際的なリメイク、グローカル化が顕著となっている。日本でも昨年『最高の人生の見つけ方』が吉永小百合主演でリメイクされました。さて、数年前から噂されていた『フレンチアルプスで起きたこと』がいつの間にか完成してみました。リューベン・オストルンドの切れ味抜群な鬱ドラマを『ファミリー・ツリー』の脚本家コンビ、ナット・ファクソン&ジム・ラッシュが映画化した。ということなので観てみました。

世界で話題になった作品をアメリカでリメイクすると風味がどうしてなくなってしまうのだろうか?まるで、家庭の味をフランチャイズ化し、軽く嗜むには良いが明日には忘れてしまいそうな作品になってしまっている気がする。それこそ昨年観賞した『最強のふたり』のリメイク『人生の動かし方(THE UPSIDE/最強のふたり)』はただケヴィン・ハートを配置しただけの薬にも毒にもならないドラマに仕上がっており、何故『最強のふたり』がフランスでヒットしたのかといった本質に全く迫れていなかった。

確かに、『フレンチアルプスで起きたこと』のリメイク『Downhill』には工夫が見受けられる。元ネタでは、プライベートゾーンにズケズケと入ってくる家族からフラストレーションを発酵させていったのだが、本作では家族がいく先々で、少しずつ精神に傷をつけていく嫌な人を登場させている。子どもが怪我するかもしれないといったヒヤリを表現するために登場させるワイルド強面なスキー客像には、監督の原作を超えてやろうという意識が感じられます。

しかしながら、やたらとカットを割って演出する雪崩のシーンや、洗面所の壁を使った安易過ぎる家族の絆に亀裂が入った描写などを観ると、監督の力量不足が露見している。そして『フレンチアルプスで起きたこと』で特徴的だった、霧のようになった雪の空間の中で家族の絆を再確認する場面や、美しさと不穏さを共存させるリゾート地の情景といったアート的側面がなくなってしまい、その結果登場人物がギャーギャー叫んでいるだけの下品なドラマになり下がっていたのが非常に残念だった。

こんな調子だったら、アメリカで『ありがとう、トニ・エルドマン』をリメイクするのはやめておいたほうが良い。いくらジャック・ニコルソンが主演だからって、アメリカにはヨーロッパ文化をローカルに翻訳する能力に欠けている為、余程の技量が持った監督でないと成功は厳しいと感じた。