ぬーたん

雨あがるのぬーたんのレビュー・感想・評価

雨あがる(1999年製作の映画)
4.0
今年ラストレビュー。
2000年公開。山本周五郎原作。
黒澤明が脚本執筆中に骨折しその後、未完成のまま亡くなった。
遺されたノートなどを基に映画化した。
旅する武士、三沢伊兵衛を寺尾聡。
『ルビーの指輪』のイメージが強いし、役者としてどうなのかは分からないが、のほほんとした欲のない雰囲気がこの役にぴったり。
ひょろっとしてるし、それほど強そうには見えないのに、いざとなったら強い、というギャップがまた良いね。
妻役は宮崎美子。何だか愛想が無く物静かで、襖をガラッと開けたら必ず針仕事をしている妻。
それがラスト近くでこれまたギャップに驚く。
藩主に三船史郎。
観ている間は名前を知らず、とにかく今作を台無しにしている俳優だ、としか思わなかった。
馬に乗りながら喋っているが、その馬がずっと暴れていて、馬が気になってセリフが入って来ない。
監督、何故撮り直さなかったのか?
狙いが分からん。
後方に居る家臣たちの馬は大人しくしてるというのに。
その上、この殿は声高に良く喋るが、どうにも下手くそで、舞台劇のセリフ回しのようで、浮いてしまってる。
それでも、キャラが良いから、最後の方はこの殿が好きにはなるが…。
終わってから調べたら、名前を見てすぐ理解。
三船敏郎の息子だった、あぁそうかと納得。
黒澤監督に捧げる作品だからね、仕方ないのかも。
二世対決は寺尾聡の圧勝。
でも印象に残ったのは案外、この三船ジュニアの方かな。
他の俳優陣が豪華で上手く、外堀から攻めていくかのような感じである。
井川比佐志、松村達雄。仲代達也は渋いね。
吉岡秀隆、壇ふみ。原田美枝子は妖艶。
淡々と進むからボケーっと観てると、後半からどんどん面白くなって来る。
1時間半という短さも良い。
ラスト近くに心を揺さぶられるセリフと行動が待っている。
残念なのは、三船ジュニアの演技とラストの引っ張り方。
ラストは更にまだあったらしいが、このラストでも蛇足であると思う。
出来れば、上方からのカメラ。
2人が歩くシーンで終わっていれば、どんなにか良かっただろう。
でも、ジーンと心に来た。
『雨あがる』そして心の雨もあがる。
何だか清々しくて心地良い作品だった。
黒澤監督が撮っていたら…もっとインパクトは強かっただろうなあ。
どちらが良いかは分からないけども。

来年も映画三昧で過ごしたい。
ぬーたん

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