ヨーク

劇場版 Gのレコンギスタ II ベルリ撃進のヨークのレビュー・感想・評価

3.8
全5部予定の『劇場版Gのレコンギスタ』の第2部なので序盤から中盤にかけてのつなぎ回といったところでしょうか。第1部のときにも書いたんだけれどすごく長丁場の作品なので本作を持って一本の映画として評価しろと言われても結構難しいなぁという思いは相変わらずある。しかしまぁ深く考えずに適当に感想を書きます。以下適当な感想。
設定と描写は本当にSF作品として素晴らしいと思う。正直な気持ちを述べるとガンダムという看板なんかつけずにオリジナルのSFロボットアニメとして制作しても良かったのではないかと思ってしまう。まぁガンダムの名前を冠するだけでプラモも含めた売り上げが段違いなのだろうからそんなことはしないのだろうが。というか俺の個人的な気持ちとしてはガンダムはおろか巨大ロボットさえ出さなくても本作品は物語として面白いものになると思うんだけれど、まぁ富野由悠季という人のことを考えれば巨大ロボットは外せないか、外せないよなぁ。
前作の感想ではあらすじすら説明していなかったので一応書いておくと、お話としてはかつて極まった科学技術と巨大ロボット(以下MS)による戦争で絶滅寸前にまでなってしまった人類がなんとか持ち直して、過去の過ちを繰り返さないように厳格な宗教によって科学技術の発展に抑制をかけ、軌道エレベーターを通して地球外から運ばれてくるエネルギー資源を人類全体で公平に分け合いながら生きている、という設定です。だが人類も一枚岩ではなく軌道エレベーターを管理している者たちがエネルギー資源を牛耳っているのではないかと反感を持つ者もいれば、そもそもその資源はどこからやってくるんだよと疑問を持つ者もいる。そういう人たちが争って軋轢を生みながらもこの世界の仕組みはどうなっているのか? という疑問に迫っていくのが本作の大まかなお話です。別にガンダムはおろか巨大ロボが出てこなくても面白そうでしょ?
いや実際面白いんだよ。ただロボットアニメというのは割と閉じられたジャンルなので中々興味のない人が観てくれるものではないし、さらに輪をかけて本作はTVアニメのリメイクなので新規の観客はかなり少ないだろう。こういう売り方しかできないのはバンダイとサンライズの限界を感じもして非常にもどかしいですね。本作は凄く真っ当に面白いSF冒険ものなのにガンダムや巨大ロボアニメの文脈上でばかり語られるのは勿体ないと思う。その文脈の延長線上だとは思うけど本作も前作から引き続きひっきりなしに戦うんですよね。バトルシーンが凄く多い。ロボットのアクションシーンは個人的に大好物なのでそれはうれしいことでもあるんだけれど、反面他に売り物がないという自信の無さの表れのような気もして寂しくなるのだ。ガンダムがガシャガシャ戦う以外にも面白いところはいっぱいある作品なんだからそっちを売りにできねぇのかな、とか思ってしまうわけです。プラモデル売らなきゃいけないから難しいんすかね。
あと、作品と直接関係があることかどうかは怪しいが、最近のコロナウイルス騒動を眺めてると富野総監督が本作で描きたいことがなんとなくわかってきたような気もした。人類の技術がいくら進化してMSが凄く強くなっても人類そのものは大して変わりゃしねぇ、ということではないだろうか。電気自動車に乗ってスマホを操っていても下らない流言に流されてトイレットペーパーとか必要以上に買っちゃうわけですよ。本作の登場人物たちも凄いMSに乗って超技術と強大な兵器を操っているように見えるけどまぁ我々と変わりない普通の人間だという風に描写されていると思う。技術が進歩しても変わらない愚かな人類。そういう風に描かれていると思う。上記した戦闘シーンの多さは何も販促的なものだけじゃなく、超技術を手にしてもお前らどうせ戦争にしか使わないじゃん、という皮肉なのかもしれない。
そういうのがさりげなく描かれていてやっぱ面白いアニメだなぁと思いますよ。物語は徐々にエンジンがかかってきてエネルギーがやってくる地球外へと舞台は移っていくところで本作は終わりですが、次回も楽しみです。まぁTV版見てたから大体は知ってるけど。
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