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世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカのトレバーのレビュー・感想・評価

4.5
今回は、二本立てで行きたいと思います。
ホントにたまたまだったのですが、
対照的な二本を同じ日に観て、考える事が
いっぱいあり、レビューを書くにも二本対に
なる内容になりそうだな、となりまして。

「国民に選ばれた者は、国民と同じ生活をするべきだ」

2010年から5年間ウルグアイの大統領を務めあげ、
国民に愛されたホセ・ムヒカ。

極貧な家庭に生まれ、ゲリラ活動に身を投じた青春時代。
(銀行強盗をして、貧しい人々に届ける義賊的な事もしていたそう)
瀕死の銃撃を受け脾臓を失い、13年投獄されました。
囚人として登録されず、あちこちをたらい回しにされました。
水は1日一杯。活動していた同志曰くとても足りず、
尿を溜め塩分を沈ませてから啜るように飲んだそう。
でも、収監された長い時期が無ければ、今の自分はいないとムヒカは語ります。
尊大な人間になっていたろう、と。
服役中に学び、出所後政治活動に身を投じる。
農業大臣、首相、ついに大統領に選ばれる。
収監されていた間も切れる事の無かった絆の
パートナーも、ムヒカが退任後副大統領を務めました。

大統領を退いてからも、子供のいないムヒカは
財産を残す必要は無い、と私財を投じ財団を設立、
貧困層のための住居、学校を作りました。
(どこかの国の子無し党首にこれが出来ますかね?w)
収入の9割を寄付し、議員時代からずっと
自ら農地をトラクターで耕し、公務移動は
可愛い緑色のワーゲン。
ムヒカの生き方は清貧そのもの。

「携帯電話は便利だ。だから色んなものを携帯してほしい。前立腺を悪くしているから、トイレも携帯したい」
常にユーモアも忘れないムヒカの発言は金言ばかり。
「政治の世界に探すべきは、大きな心と小さなポケットの人物だ」
「矛盾しているように聞こえるが、時に悪は善になる。逆に、善は悪になりえるんだ」
艱難辛苦を経た人物故の深い言葉です。

革命を夢見て、過激な闘争に身を投じる者や
平和主義で戦い続ける者、今まで何人も
理想に向かい夢破れてきました。
右、左に関わらず権力を手にしてしまうと結局
君主になってしまうとムヒカは語ります。
ムヒカはそうならないように退き、
今も貧しい人のために活動しています。

だから、彼は唯一社会民主主義を成功させた大統領として
ノーベル平和賞にノミネートされたのです。

暖かい人柄、夫人との絆を見ているだけでも癒されます。

絶望的な世の中にも一筋の光が見える、そんなドキュメンタリーです。
政治家に希望が見出せない我々だと、むしろ
悲しくなってしまうかもしれませんがw
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