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世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカのmosharineのレビュー・感想・評価

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冒頭からしばしば登場するクストリッツァ監督。
ムヒカ元大統領(以下、ムヒおじいちゃま)の庭で葉巻を吸ったり、おじいちゃまの差し出すお茶?酒?を不器用に飲んでみせたりする。
この庭のシーンでは、クストリッツァの言葉(インタビュアーとしての存在)はほとんど無に等しい。
ムヒおじいちゃまの話にじっと耳を傾けて、その目を見つめるクストリッツァの姿そのものがこの映画の姿勢であり、クストリッツァ自身は監督としてのみならず、この映画の登場人物の一人としておじいちゃまという人間を語る存在になっている。

ムヒおじいちゃま、などとふざけた呼び名をつけて、と思われるかもしれないけれど、この映画の一番の驚きは、元大統領の人懐こい笑顔や、柔和な雰囲気からは想像も出来ないような熱い闘志、反体制の生き方、志を共にする妻との長い闘いの旅路が語られていることだった。
優しさだけでは強く生きられない。

終盤、クストリッツァに「人生で後悔していることはあるか」と問われた元大統領の答えや、バーで妻の肩を抱いて一緒に歌う姿を見て、この映画は夫婦の物語だと思った。
元大統領の「後悔」に敬意を込めて、私は彼を「おじいちゃま」と呼びたい。
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