きよぼん

一度も撃ってませんのきよぼんのレビュー・感想・評価

一度も撃ってません(2020年製作の映画)
3.2
わがままで、優しくて、そして楽しい。大人の映画。

予告を観るとドタバタコメディのように見えますが、ストーリーを追いかける作品ではありません。

そよれりも見所は役者たちの好き勝手やり放題の好演。コートに帽子というスタイルで、ずれたハードボイルドな台詞を口にする石橋蓮司、歌い踊る桃井かおり、相変わらず得体のしれない岸部一徳、その他次々と登場しては強烈な印象を残していくゲスト俳優たちの「わがまま」っぷりを楽しむ映画です。ストーリーは置いておきましょう。

だけど、彼らは自分たちの好きなことだけを「わがまま」に押しつけるだけではないんです。

「生意気だな」と部下を𠮟れば「パワハラですよね」と返され、街でタバコを吸えばタバコ条例が気になる。石橋蓮司のコート姿も決まってはいるけど、どこでも同じ服装で現れるのは滑稽にしかみえない。

つまり彼らは「自分たちが時代遅れである」という認識を持ってるんですね。わがままだけじゃなくて、この時代を受け入れる「優しさ」がある。

そしてなにより、幾度となく登場する彼らが酒を酌み交わすシーンは楽しい。映画の枠から外れてるようなところもあるんですけど、ええんですよ!この空気を感じることで大満足。わがままと優しさ、両方持って楽しく生きる。

だけどラストシーンはちょっと寂しかった。老兵は消えゆくもの、とか思ってないだろうな。10年後、全く同じメンバーでPART2やりましょうぞ!
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