【クジラ】
桃缶ってちょっとほかの果物の缶詰とは位置付けが違うよな・・・って薄々思ってた。
こうやってお話になるくらいだから、多かれ少なかれそう思っている方は結構いるって事なんだろうな。
なんだろう・・・。ミカンやパイナップルの缶詰だってあるし、何ならフルーツミックスだってあるのに、「桃缶」は特別というか、別格というか・・・。
ストーリーは結構シンプル。
いつも自分の事ばかり優先してなかなか一緒に居てくれない優一と、そんな彼に不満を感じながらも、でも好きだから・・と、なんだかんだで丸め込まれてしまう紗智子。
一緒に居る時間が短いと不満を漏らす紗智子に「一緒に居る時間の長さじゃなくて、密度が大事」と諭す優一。
・・・密度かぁ。
で、桃の缶詰の特別感について語り合う二人。
「この桃缶は置いていく。帰ったら一緒に食べよう」
そう言い残して、優一は旅立っていった・・・。
いかんよ。
それはゾンビ映画で言うところの「フラグ」って奴ですぜ、兄さん!
って思っていたら案の定という展開に。
お話し自体はこれといって特別何かがあるというわけではありませんが、古民家風の家の佇まいや、誰も居ない海の映像など、物語の「色あい」はとてもきれい。
彼はこの海のどこかでクジラと一緒に旅を続けているのかもしれない。
だからこそ紗智子は海で桃缶を開ける。
一緒に食べる場所はここしかないから。
感情移入できるほどの情報があまりなかったということもあり、正直いってそれほど感情が揺さぶられるというところまではいかなかったけど、瑞々しい映像と、桃缶に漂うミスマッチな切なさが何とも言えず、不思議とフワフワとした心地よさの残る品だった。