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三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実のblacknessfallのレビュー・感想・評価

3.8
この討論会を本にしたやつ以前読んだんだよ。
その時は、どっちも鼻持ちならないし、言ってることが観念的すぎてよく分からねえな。て思った。

それを映像で観てどうだったかと言うと、まあ、言ってる内容は同じなんで双方の考えに対しては本読んだ時と同じなんだけど、映像だから感じたこともあって観てよかったかな。

すごい大雑把に振り分けしてしまえばピュアな右と左の対立で宿敵同士なんだけど、双方非常に冷静に議論してる姿に好感を持った。
相手の言い分をわざと曲解したり、矮小化したり、些末な言葉じりを捉えて揚げ足を取り相手の意見を無効化する、今、思想的な議論になると必ず起こるうんざりするマウント取りがまったくなかった。
頭の悪い表現になるけど、真っ当に意見をぶつけ合い討論した笑

しかし、双方どこまで本気色々言ったのかについては疑問がある。
全共闘の人達が現在の気持ちを語るシーンがあるけど、なんかみんな、負けを認めてないんだよな笑
後に社会的に成功してても明らかに思想的に敗北してるのに、むしろ社会的に成功してるってことは敵側にスポイルされたわけで、大きく妥協したわけじゃん笑
そこを認めないのはどうなのか?と思った笑
若い頃の姿にちょっと好感持ったけど、やっぱこいつら嫌いだな笑

三島由紀夫は自身が組織した右翼結社『楯の会』のメンバーと一ヶ谷駐屯地を占拠し自衛隊にクーデターの決起を呼びかけるもガン無視され切腹自殺(楯の会のメンバーの青年、森田必勝も三島の後に切腹自殺)。
自分の思想や言葉に殉じた感はあるけど、あれほど頭のいい三島が自分の演説だけでクーデターを起こせると思ってたはずないよね。
これは自身の美意識の成就の為の自殺だと思う。
三島は強烈なナショナリストであるだけじゃなくて、フェテッシュなゲイでもある。
違うペンネームでゲイ小説を書いてる。その内容は自分のミスで生徒を死なせた教師が教え子の美少年に「死んで責任取るべき」と迫られ、その美少年の前で切腹自殺するというもの。教師の後で何故かその美少年も切腹自殺する笑

このストーリー、駐屯地での切腹自殺とまるで同じシチュエーションだよね、少年達に見守られ切腹する。ちなみに小説だと切腹前に教師と美少年の濡れ場がある。
要するに思想的な美意識とセクシャルなフェティシズムで自分の死を演出したんだよ。未来ある青年まで巻き添えして。その分、全共闘より三島の方が弱く感じる。

どっちも敗北を、てより敗北認めることから逃避してるわけで、そこにどうしても受入れ難い反発心が自分の中に湧いてくる。
ミルトンの『失楽園』のサタンのような「一敗地に塗れたからと言ってそれが何だと言うのだ!」という気概を持てないのがプライドの高いインテリの限界を見たような気がした。
ここが、全共闘と三島の共通点だと思う。

やはりどっちも嫌いだわ😂

それと、全共闘には女性もいっぱいいたはずなのに、三島と討論するのは男性だけなのが、いかにもこの時代らしいと思った。まあ、左派やリベラルも男尊女卑傾向があるのは今もそうなんだけど、そこがダレイクトに出てたと思う。
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