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三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実のどーもキューブのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

三島由紀夫対東京大学の学生イン安田講堂1968年


GAGA配給
豊島圭介監督


 
書店で見ていた文学者のひとりだった。新潮文庫を手にとった事もあった。銀色、オレンジの文字の文庫だ。「金閣寺」だった。それはATG映画があり、ビニールのVHSを見ていたからだ。

最初に見た映画は、外国人がみたポールシュレイダー監督の「ミシマ」だった。
緒形拳が出演力演するミシマだ。どこか文化を幻想的室内色使い昔話のようにみえた。実像とはほど遠いが、ファンタジックにみえた。

60年代安保に後期こだわり作品化し続けた若松孝二が撮りあげたミシマだった。

「三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜」実像がアラタとともに迫った出来だった。こんな風に自害にいたったのかと具体的に伝わってきた。若松孝二後期の素晴らしい作品だった。

それで本作、劇場公開していたのはわかっていた。きっかけは、千原ジュニアが面白いとYouTubeで言っていたそんな動機。秘蔵映像ってのも気になった。
レンタルしてみた。




安保闘争、60年代学園闘争、東大安田講堂、右派左派、共産主義とかとか抽象概念の感想とかなんだとかは、よくわからないのでそこらへんは、別途検索、抽象概念等検索していただければと思う。ていうかこれだけの事象だけで大学で学べそう。

いやあおもしろかったなー。まず豊島圭介監督、なんか覚えがあるなと思ったら、短編映画「ユメノ十夜」で1番よかった短編を撮った監督だった。TBSで見つかった資料映像からの公開だったようだ。

当時流行作家だった三島由紀夫が、学園闘争真っ最中の東大に行って、講演するドキュメンタリーだった。

レビューにもあったが、全部ノーカットで見てみたかった。かなり監督がわかりやすく章だててスポットをあてて見やすくしていた。ナレーターは、東出昌大。とてもナレーションはよかった。

それぞれの文化背景を解説。東大の紛争、三島由紀夫の文化、小説内容、生き様を紹介。からのいざ、安田講堂の演説になる。

驚いた事があった。それは、三島由紀夫の物腰の柔らかさにほかならない。とにかく、やわらかで柔軟な対論にびっくりしたのだ。

楯の会なんてやってたから、さぞ論破、いいくるめる、打倒すると思ったら全く違う。なんなら三島由紀夫に対する自分のゴリラの似顔絵さえ笑う余裕さえあった。

なんだったら楯の会と学生が喧嘩になって、一波乱あってもおかしくない。実際楯の会のメンバーは、前列に控えていたそうで、いつでもミシマを守る準備はされていた。

三島由紀夫の主張と講演から、東大生から質問に答える。

そして千原ジュニアも指摘していたひとりの対論者が現れる。これが必見だった。赤ん坊を抱え、三島由紀夫の立場や言論に対してきた芥正彦だった。論客であるアクタとミシマのマイクを渡し、対論しまくる2人のやりとりは、スリリングだった。とても見て良かったと思える所だった。ふたりがタバコに火をつけあうシーンが素晴らしかった。口では対してるが、火をつけあう。これが本作のキモかもとも思った。

三島由紀夫は、決して悪口にならないよう言葉を選びかつ、東大の学生に尊敬しつつ、疑問や相違点を熱く重ねていくミシマに対し、質問で三島の考えの中枢、天皇、活動、文学作品に迫っていく。

今こんなに対論出来ているのか?
今こんな活動的、共犯的な若者がいるのか?
デタッチメントだらけな人ばかりでいいのか?、、、

と思うと、当時このフィルムに出演していた学生達、楯の会のメンバーがコメント出演していた。これもびっくりした。

俳優、教授、論客それぞれ。また三島由紀夫が好きな文学者、平野啓一郎の本作のコメントが素晴らしかった。必聴だ。

 まるでさながら「小森のオバチャマ」の如く、先日お亡くなりになった瀬戸内寂聴がミシマを褒めちぎっていた。「目が優しい」と。

本作みて三島由紀夫の「金閣寺」でも読んでみたいと思った。

個人的に、学園闘争をした悪い絡みをする人を過去に出会った事あるので、私的に嫌な感じもあったのだが、それは本作には皆無。

もっと酷い人は実在する。 
また村上春樹が学園闘争は、ある意味バブル経済をもたらし、経済を破壊したような趣旨をツィッターでこれを書く前にみた。
なるほど勉強になる。私は、学園闘争ってやっぱり、戦後からの貧乏からの思索脱却みたいな側面があったと感じている。
もし、この1968年にアルバイトがいっぱいあったら、携帯があったら、若者は、ゲバ棒じゃなく、「イン〇ィード」のサイトでバイトでもして金稼いではいないか?と思った。




さて
三島由紀夫、1968年東京大学安田講堂にて
ぜひ!ご覧ください!

貴重なドキュメンタリーでした。

追記
YouTubeに三島監督の短編映画「憂国」があるからみてみたい。けど、それこそ本作は、ポールシュレイダーの「ミシマ」的性質の映画にも外観はなんとなくみえる。

フィルマークス追記
ポールシュレイダーの「ミシマ」をレンタル屋で違法レンタルした時興奮したなー(今から半世紀弱前)みたら緒形拳のジャケット写真とかけ離れたファンタジーでびっくり。

ミシマが優しいのがよくわかった。さあ若者よ!論戦しようぜぇ!っていうのがよくわかった。とにかく批判も、会話のさえぎりも、とにかく受け入れる素晴らしさ。いやあ恐れいりましたね。
三島由紀夫は意識的に学生と対論していたようなんですね。刺激的だったのかな?

私的に学園闘争って、アメリカの公民権運動と違って何か法律でも生み出せたら、きっと学生闘争は今も残ってたりして?と思います。
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