改名した三島こねこ

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実の改名した三島こねこのレビュー・感想・評価

4.2
<概説>

戦後展開された学生闘争において設けられた三島由紀夫との討論会。そこから見えた両者の思想の根幹を紐解こうと試みる意欲的なドキュメンタリー。三島由紀夫ファンならば垂涎の秘蔵映像をふんだんに使用している。

<感想>

三島由紀夫というと大多数のイメージが「最後切腹した頭のおかしい右翼思想家」。しかしそれはただの偏見で、実際の三島由紀夫はとてもユーモラスかつ度量が大きな人格者であった。

元々題材が題材だけに観念論が苦手な人にはオススメできない。ただ三島由紀夫らの戦後文学を好む人種には欠かせない内容。よく言われる戦後日本人のアイデンティティ復興の根底だとかもわかりやすく論じている。つまるところ興味ない人は間違いなく開幕30分で爆睡します。

本作は三島由紀夫が主人公ではあるのだけれど、対立論客として登壇した芥氏の論にもまた唸らされる。相互の理知への敬意を払いつつも、全共闘の既存権力構造の破壊行動と、三島の時間継続に基づいた日本という保守文化がぶつかりあう。両者の価値観が完成されているだけにどこまでも本質のところで平行線なのだけれど、それでも討論として有意義なことは間違いない二時間。

本作で一番論じやすいのは芥氏の解放区の論だろう。三島も指摘していたが解放区が生じた以上、そこに事象を形成するには名前を前提とした継続概念が必要であり、徹底的な価値観の破壊を目論む学生運動はそもそも矛盾してはいないだろうか。いや芥氏は間違えていないのだが、登壇した論客の何人かはそれに無自覚であるような。