あんじょーら

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実のあんじょーらのレビュー・感想・評価

2.5
三島作品はいくつか読んでいますし、文学作品として好きなものもありますが、ちょっと行き過ぎな部分も感じる人ですが、何しろ、私が生まれて2か月後には亡くなられてしまっているので、正直、どのような人であるのか?は理解出来ていません。


そして振付師であるベジャールが三島の作品をバレエにしているので、いつか見たいのですが、その前に三島を見ておこうと思ったのと、時間的に行けるのがこれしか無かったので、吉祥寺オデヲンで、緊急事態宣言解除後、初めて劇場に来ました。


まぁ有名な三島が東大で討論した事は知っていましたが、正直何処までかみ合った議論だったのか?結構前にYouTubeでも見ていましたけれど、とても見やすく編集されています。うん、分かり易いし、注釈も有り難いです。


細かな話しやキャラクターは良いとして、何が1番気になったかって、それは三島の態度ですね。ここまで、割合近代ゴリラとまで揶揄されつつも、凄く大人な態度で、まず、ここが素晴らしかった。そして、論点を、対立させようというのではなく、あくまで、私の立場、を説明し、それを受けて相手に花を持たせるまで持って行き、しかも、相手の話しをすべて受けきる、という、こういう事他にしている人、いないと思います。


議論って実はとても難しく、相手を敬う気持ちが無い人とは、絶対に議論になりません。だいたいにおいて、それは口論と呼ばれるモノで、言葉での殴り合いに興味がある人は、プロレスを観に行った方がいいと思うし、非常に下品、と私は考えます。


マウンティングを含んだ口論になる場合って、誰でも本心では話していなくて、相手の言葉尻やちょっとした言い間違いの揚げ足取りをして、いわゆる私は勝った、という二項論、勝ち負けに持って行きたいだけで、それって非常にナイーブな、まぁ自意識の愛撫だとも思うし、それなら家で隠してやってくれ、とも思います。


しかし、大人な議論を見た事がある人なら、とてもエキサイティングで面白いし、相手の土俵に乗り込んで、その場所で相撲をとる、くらいの事をやるのが議論というモノだと、私個人は思っています。だから鼎談くらいまで、ですよね議論が出来るのって。


そういう意味で、実は全共闘の人に大変難しいインタビューを答えなければならなくなるのが、本当に厳しいと思います。若気の至り、という事ではすまないレベルにまで周囲を巻き込んでいますし、その結果がある意味人生にまで影響を及ぼしています。


映画の最後の方に、全共闘の人へのインタビューがありますけれど、本当にキツイですね。


中でも、芥さん、という全共闘の論客というか、演劇の演出家がいるんですけれど、この方の空論、は言い過ぎかもしれませんけれど、相手の言葉を決して受け入れないまま、そこから50年もその状態を貫いていて、これはなんというか、非常に可哀そうだ、と感じました。まぁ好きでやっているんでしょうけれど・・・そして、若い頃はあんなにかっこよかったのに、50年後がちょっと想像できない姿で、そこも時間の経過の恐ろしさを感じさせます、私も今年50歳で、全然賢くならずにいますので、人の事は言えないですね・・・


三島の意見に賛成出来る部分もありますけれど、この人も相当なロマンティストで、しかし、大変努力し行動する部分は尊敬できると思います。三島は保守なのではなく、天皇主義者なんだと思いますけれど。そして、文化を守るという事、大事だとも思いますけれど、すべての文化は影響し合い、干渉を受け、摩耗し消費され、栄華を極めたりしながら、緩やかに消滅していくものだと思うので、あまりに先鋭化するのはちょっと違う気がします。


天皇陛下が存在する事での文化は理解出来ますけれど、あまりに、あまりに天皇陛下の人間性が多大に奪われ過ぎていると思います。1人の人間が背負える限界を超えていると思います。それに、このままですと、早晩皇位継承者がいななくなると思われますし・・・


あ、あと、瀬戸内さんが何で出演されているのか?全然ワカラナカッタです、この映画には必要なかったんじゃないかな。


三島作品に触れた事がある人に、全共闘がなんだったのか?に興味がある人にオススメ致します。