快活で口が達者でコミュニケーション能力が高いダフネにダウン症を感じたのは、序盤だけだったかもしれない。
母マリアを喪って情緒不安定のようになったダフネ。泣いて叫んで悲しんで、感情全開にして母の死を嘆くダフネに周りは少し手を焼いていたけれど、でもちゃんとダフネはさよならが出来たんだと思う。だからこそ、落ち着いてマリアの居ない日常に戻れたんじゃないかな。
ダフネが元気を取り戻していく一方で、弱り続けるルイジが切なかったなぁ。ダフネと違って、ちゃんと心の整理が出来ないままマリアの居ない日常を生きなければいけなくなった感じがして、不安に押し潰されるんじゃないかと思った。
そんなルイジを気に掛け、母の生まれた村に行くことを提案したダフネ。まるで親と子の役割が逆転したようで、ダフネはとても頼もしかったし、きっとルイジにもそれは伝わったと思う。
ダフネがダウン症であることは、この映画ではあまり重要ではなかったように思えた。ダフネとルイジのような父と娘の微妙な距離感は“あるある”だと感じたから。ふたりを繋いでいたマリアの喪失という大きな悲しみを経験したことで変化するふたりの距離感を、映画は優しく描いていたなと思った。
#74_2021