ゆめちん

パピチャ 未来へのランウェイのゆめちんのレビュー・感想・評価

4.5
パピチャ 未来へのランウェイ
 
タイトルの "パピチャ" とは、アルジェリアで若い娘に使うスラングで、"常識にとらわれない自由な女性" という意味だそう。まさしく主人公のネジュマは、パピチャのイメージそのままの女性だった。
 
1990年代のアルジェリア。大学生のネジュマは、ナイトクラブで自作のドレスを販売し、いつしかデザイナーになることを夢見ていた。しかしイスラム原理主義勢力の台頭で街ではテロが頻発し、女性はヒジャブの着用を強制されるようになっていく。
 
冒頭に "実話に基づく" というテロップが流れるが、ポスターから想像するよりはるかに過酷な作品だった。
女性というだけで服装や行動を制限され、青春を謳歌することもままならず、夢を追うのも命懸けという異常な世界。街は日に日に狂気が支配を強め、常に悲劇と隣り合わせる過酷な現実が観ていて息苦しかった。

ネジュマの "国を出る必要はない、闘う必要があるだけ" という言葉が深く印象に残る。度重なる弾圧と挫折を乗り越え、信念を貫こうとするネジュマの姿は凛々しく映り、その力強い眼差しに勇気を貰えた。

"スペシャルズ!" で言語聴覚士役としてインパクトを残したリナ・クードリ。今作では強い意志を持ち続けるネジュマを魅力いっぱいに演じ、今後も注目したい女優さんのひとり。

ムニア・メドゥール監督自身の経験から生まれた本作。"アルジェリア暗礁の10年" を、映像を通して内側から伝えてくれる作品はとても貴重。ただアルジェリアでは未だに上映禁止だそうで、30年あまりが経過した今も、真の自由を求めパピチャたちの闘いが続いているかと思うと心が痛む。

それにしても、力強く生きるパピチャたちの一方で、出てくる男たちが揃いも揃って "ろくでなし" で何とも情けなかった。
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