ゲーム大好き、wi-fi命、女の子みたいな可愛らしい風貌を持つ14歳の都会の男の子トマが夏休みの間お父さんの暮らす田舎へ遊びに行き、ある出来事をきっかけにフランスからノルウェーまで渡り鳥と共に旅をするという実話に基づいた愛と勇気と感動のお話(ベタな言い回しだけど本当にそれ)。
フランスの田舎カマルグで暮らすお父さんは誰もが無茶だと呆れるほど無謀なプロジェクト、「人が超軽量飛行機に乗って渡り鳥たちの群れを扇動し、鳥たちに安全なルートを教える」という、人と鳥とが共に並んで空を飛ぶいわば夢のまた夢みたいなプロジェクトの研究を長年行っている。
田舎でのスローライフなんて興味ゼロな都会出身のトマは一匹の渡り鳥の卵から孵る瞬間に立ち会うことで親としての意識が芽生え、その子をアッカと名付ける。トマは渡り鳥たちを守ることを決意し、周りの大人たちのジレンマを乗り越え自らの意志で鳥たちと共に空を飛ぶことに成功する。「自分が正しいと思ったことを思った通りにやる」。簡単に見えて大人になるとなかなかできないそのシンプルな行動を、大人たちの反対を押し切って進んでゆく勇気あるトマの姿を見て、なんだか自分も背中を押された気分だった。
空の旅と聞くと聞こえが良いが、自然は恐ろしいもので嵐に巻き込まれたり障害物に出会したりと困難だらけだ。休息とガソリン補充のために降り立った北欧の小さな漁港や町で出会った人々との交流も描かれており、言葉や人種の壁も越えて人々はトマを応援し、トマを支え、トマを映すスマホの動画は見る見るうちにフランス全土へと拡散する。孤独に空を飛ぶトマが人との繋がりを実感し、また鳥たちを守ろうと命懸けで飛ぶその勇敢な姿にはキラキラした瞳と輝く笑顔。ゲーム好きの気怠そうなインドア少年の面影はもうどこにもない。
トマを支える家族をはじめとする大人たちのドラマもなかなか泣けるもので、これは単なる少年の冒険映画ではない。広い空の美しさ、自然の脅威、困難に立ち向かう勇気、自分を信じる気持ち、人との繋がり。14歳のトマにこの2時間の映画で本当に色々な事を教えてもらい、また大人になるにつれて失った、あるいは置き忘れてきた色々なものに気づくことができた。
今回はオンライン試写会ということで、pcに繋いで24インチのモニタでの鑑賞だったが間違いなく絶対にスクリーンで観るべき映画。公開されたらもう一度観に行こうと思う。コロナ禍の今だからこそ、自然との共生、これからの生き方を考える上でも今の私たちにとって大切な作品になるだろう。