幽斎

モルグ 死霊病棟の幽斎のレビュー・感想・評価

モルグ 死霊病棟(2019年製作の映画)
3.0
パラグアイ映画を観るのは2012年「7BOX セブンボックス」一応スリラーだがプロットが既視感強め、貧困層の葛藤などお国柄を反映した作品以来2本目。パラグアイはマテ茶しか思い出せない。未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】オンライン鑑賞。

ホラーとして観れば「お化け屋敷映画」幽霊で驚かす極めてシンプルな構図。プロットは日本の怪談風に展開するが、これは観る人を選ぶ、と言うよりホラー慣れか否かで速攻で評価が割れる。ホラーは苦手で陰惨なシーンは観たくない、とかコントの様に来るゾ、来るゾ、来たぁ~的な喜びが分かち合える方にはフィットするが、毎日ホラーを観てる方は此処でレビューを閉じて構わない。其れ位全体的に薄塩、ポテチではない。

原題「Morgue」フランス語由来、イギリスは「mortuary」が一般的。北アメリカは比較的モルグと言うフレーズを使う事が多く、死体に限らず陰湿な雰囲気の場所も形容する。因みに病院に有るモルグクーラーは温度設定が2種類あり、遺体を引き取る為の一時的保管なら2℃~5℃。大学病院等で病理解剖を行う場合は-15℃~-20℃で保管する。死体は法的に72時間以内に埋葬処理する義務が有る。

パラグアイの映画事情は見当付かないが、ストーリーも王道中の王道でパラグアイらしい個性を感じられるセグメントも見当たらない。典型的な「ジャンプスケア」に頼る演出は一周廻っても新鮮には映らず、ハリウッドがジャンプスケアを多用して、ホラー映画衰退の一因を作った事は記憶に新しい。「死霊館」シリーズの様に、監督の演出力で新たなホラーの扉を開ける作品と鑑みると、観るに値する部分を探すのに一苦労。特に前半と後半との落差が激しく、素人がホラー映画を作るとこうなる的な演出には興醒め。

気に入らないのは日本の謳い文句「パラグアイで実際に起きた怪奇事件を基にした衝撃映画」と有るが、ホンマかいなと調べると、Hugo Cardozo監督が、モルグの有る病院を訪ね、医師や看護師から集めた体験談を基に脚本を書いた。つまり友達の友達から聞いた話だけど、で始まる都市伝説と変わらない信憑性。やっぱり(笑)。

パラグアイの人が見たら気を悪くするかもしれないが、こんな作品よく世に出たなと思ったら理由が有る。実は北米で配信され、ソコソコ売れたらしい。昔のJホラーを想起させる演出がお気に召したのか「ライト/オフ」の脚本兼プロデューサーEric Heissererが、リメイク権を買い取りハリウッドで製作が決まり、パラグアイではビッグニュースとして取り上げられた。水を差す様で悪いが、この程度の作品をリメイクしなければ為らない程、ハリウッドのキャビネット(映画化を前提に書かれた脚本)は在庫が無いのか?。そして南米にしては湿り気の有る恐怖描写が「ジャンプスケア」の更なる多投で良さを消し去る懸念も。取り越し苦労で有る事を祈るしかない。

パラグアイ産のオカルト・ホラー。珍味がお好きな方は試して見る価値が・・・微妙だな(笑)。
幽斎

幽斎