ユミコ

春色のスープのユミコのレビュー・感想・評価

春色のスープ(2008年製作の映画)
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福島県の南会津の穏やかな田舎。
全てがキレイだった。
同県の福島市ご出身の詩人、長田弘さまの作品が随所で朗読される (ちゃっかり?高村光太郎さまの作品も一つだけあったりした)。 登場人物たちの心の在り方の変化と、この詩とが溶け合っていた。

ヒロインは高校生の桃子(佐津川愛美さん)。母親(鈴木砂羽さん)との確執、つまらない学校、毎日仲間と夜遊び… 荒んだ日々を過ごしていた。そんなある日、桃子は、大好きなローカルラジオ番組で読まれていた長田弘さまの詩に心を動かされる。たまたま桃子の家にも長田さまの本(詩集)があった。バイトの休憩中、桃子がその本を読んでいると、そこで知り合った先輩、三津子(美保純さん)に、盲学校で詩の朗読のボランティアをやってみない?と誘われ、渋々OKするが、そこ絡みで出会った盲目の高校生、亮太(栩原楽人さん)が気になる存在に。
それまで全てのことに投げやりになっていた桃子が、亮太のこと、母とのことにシッカリ向き合えるようになったのは、この詩と出会えたから。

福島県内であっても原発事故の汚染のなかった会津地方は、震災以前のこの当時も、そして現在も変わらず美しい。長田さまや高村さまが詠まれたような清らな福島のまま。そんな南会津の山に咲く桃の花が見事。桃子が唯一、自分の中で気に入っているものは自分の名前だと言った。その由来である桃の花につつまれ、花を見上げる桃子がキレイだった。
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