ゆめちん

ミナリのゆめちんのレビュー・感想・評価

ミナリ(2020年製作の映画)
3.5
ミナリ

ゆっくりと噛み締めながら味わう作品で、シンプルなメッセージが静かな余韻を残します。

1980年代、農業で成功を目指す韓国系移民のジェイコブは、西海岸からアメリカ・アーカンソー州に家族と共に移住するが、妻モニカは広大な荒地と、ボロボロのトレーラーハウスを見て不安を抱く。
 
監督の実体験をもとにした、人間味溢れる家族の物語。移民として成功を夢見る家族の苦悩、夫婦間のすれ違い、そこからの家族の再生をユーモアも交えながら丁寧に描いていく。
移民への差別や迫害などはあまり描かれず、夢を追う家族の日常に焦点が当てられているのは好感が持てる。
 
主人公家族のキャラが皆が魅力的。子供たちが諍いの絶えない両親に心を痛め、幼いながらに2人の仲を取りなそうと、紙ヒコーキを飛ばす姿が印象に残る。最初は祖母を "お婆ちゃんっぽくない" というデビッド。そんな二人の距離間が徐々に縮まり、心通わせていく過程が微笑ましく映る。

ラストシーンでタイトルの意味を噛み締める。大地にしっかり根を張る "ミナリ" に、未来への希望を見いだすことができる。きっとジェイコブたち家族は、何があっても前を向き逞しく生きていくだろうと。

ここのところ毒舌なおばあちゃん役ばかりのユン・ヨジョン。本作でも徐々に存在感が増していく祖母を巧みに演じきり、物語に深い味わいを残してくれる。
隣人ポールを演じるウィル・パットンが、物語のいいアクセントに。久しぶりにスクリーンで観たが、大好きな俳優の1人なのでまだまだ頑張ってほしい。
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