ケイスケ

ミナリのケイスケのレビュー・感想・評価

ミナリ(2020年製作の映画)
4.0
スティーブン・ユァン、あんた『バーニング 劇場版』では焼く方だったろ!

1980年代、農業で成功したいと意気込む韓国系移民のジェイコブは、アメリカ・アーカンソー州に家族と共に移住。広大な荒地とおんぼろのトレーラーハウスを見た妻は、夫の無謀な冒険に危うさを感じる。一方、しっかり者の長女アンと好奇心豊かな弟デビッドは新天地に希望を見いだし、デビッドは口の悪い破天荒な祖母とも風変わりな絆を育む。しかし、干ばつなどのために窮地に立たされた一家をさらなる試練が襲う。

本作はネットの評価が割れていて否定的な意見の中には「地味」って言う言葉が目につきましたね。そうかな?面白さの評価は人それぞれだから良いんだけど、最初から家族同士のヒリヒリした感じや農作物に失敗する展開が面白いし、雄大な自然の景色も目を奪われます。しかも中盤からキャラが濃いおばあちゃんまで出るしね。

1980年代の話ということは今よりも全然、家父長としての意識が強かった時代ですよね。ジェイコブが息子デビットにヒヨコが燃やされる煙を見て「男は役に立たないとああなる」と言ってる場面が印象的。しかしトレーラーハウスにはしゃいでいるジェイコブを見ていると子供っぽくもありますね。そんな夫に妻モニカは呆れ顔。

その後も家族に様々な境遇が起きます。後半からラストは「えっ!こんな展開になるの?」という驚きも。特におばあちゃんに起きるあることがめちゃくちゃ切ないですね。おばあちゃんが素晴らしいキャラなぶん余計にしんどい。孫2人がおばあちゃんを呼び止めて「家はあっちだよ?一緒に帰ろう?」って言う場面で号泣してしまった。てかこのレビュー書きながらちょっと泣いてる。

家族が崩壊してから再生するまでの映画は面白い作品が多いですが、本作もその一つですね。地味と感じるのは確かに小ぢんまりとした話というのはあるかもしれません。でも全編通して非常に緊張感がありますよ。この感覚は日本映画だと是枝監督作品を観ている感じに近いかも。作品賞、そして助演女優賞のユン・ヨジョンなどオスカー6部門ノミネートも納得だと思います。傑作!